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『大前研一ビジネスジャーナルNo.1 「強いグローバル戦略/脆いグローバル戦略」』Chapter 1 Overviewより


世界経済の成長は鈍化。BRICSの低迷が鮮明に。

●BRICSから、「BRICS」へ

 まず図―1のグラフを見ていただきたい。2013年における世界経済の成長は、2012年に比べ、先進国、新興国ともに鈍化していることが分かります。特に、BRICSの低迷が鮮明になっています。BRICSというのは、ゴールドマン・サックスが2004年に『BRICSとともに見る夢2050年への道』(※1-1)というレポートを発表したときは、最後の「S」が小文字でした。つまり、ブラジル(Brazil)、ロシア(Russia)、インド(India)、中国(China)の4ヵ国のことを指していました。しかし最近は最後のSを大文字で書いて、南アフリカ共和国(South-Africa)を入れるようになり、この5ヵ国の首脳が年に1回集まるようになっています。このBRICS諸国の低迷が鮮明になっているのです。

中国だけがGDP成長率7パーセント以上を維持していますが、この国の場合には、「我が国はGDPが7パーセント以上成長している」、と言っていないと駄目なので、データ上は一応7パーセント台ということになっていますが、このグラフを見ると、ほとんどの国・地域が、2012年に比べると、平均0.3ポイント下がる見通しだということです。

 リーマンショック以降、「これからは新興国の時代だ」とか、「QE3(※1-2)が終焉するかもしれない」などと言われ、新興国・資源国にお金が流れていきました。それが今になって、新興国から先進国の、主として株式のほうにマネーが戻っている、といった状況です。

 ただ、先進国は、どこの国もお金が戻ってきても、あまり成長の機会がない。したがって、長期的にはやはり、しっかりとした新興国に、再びお金は向かっていくだろうと考えられます。


●BRICS低迷の原因は「政治腐敗」

 図―2の「株式市場の株価騰落率」グラフを見ても、基本的にはBRICSが低迷し、日本の株が世界の中でも断とつトップという状況になりました。2013年の1月から11月までに、株価が40パーセント伸びています。株でもうけた人が、今、デパート等でたくさん買い物をしてくれているわけです。

 BRICSの低迷についてですが、原因はどこの国もすべて「腐敗」です。BRICSすべて腐敗しています。それは、「腐敗指数ランキング」を見れば一目瞭然です。この腐敗指数ランキングというのは、約180ヵ国を対象に「清潔な状態」にある国を1位から順にランキング化したものですが、ブラジル、南アが72位。中国が80位、インドが94位、ロシアが127位です。この数字だけ見ても、BRICSの腐敗度合いが分かります。「BRICSは先進国には入れない」と見られていますが、それは腐敗が原因なのです。

 インドの場合は主に政治家の腐敗がひどい。中国は役人と政治家。実際に、2012年10月にニューヨークタイムズが、「温家宝首相(当時)の不正蓄財は2000億円以上ある」と報じました。ちなみにこの報道に対する中国側からの反論は一切ないそうです。

 ロシアの場合は、政治家の腐敗よりも役人の腐敗が深刻な問題です。ご存じのように、2013年11月に、ロシアのカザニでボーイング737型機が着陸時に墜落し、乗客・乗員合わせて50人が死亡する事故がありました。事故原因を調べてみたら、パイロットが未熟だったと。なぜかというと、ロシアには100カ所くらいパイロット養成所があるのですが、このパイロットは、パイロット養成所の所長さんにお金を渡して免許を取得したというのです。信じられませんが、大型旅客機のパイロット免許がお金で買われているというのです。ロシアでは以前ヘリコプターの墜落事故もあったのですが、この時のパイロットも、やはり金で免許を買っていたことがばれている。パイロットのライセンスをお金であげたらいけないですよね。

 これは、もう何とかしてほしいと思いますが、ロシアに行ったら、ロシア人パイロットの飛行機には乗らないほうがいいと思います。ロシアの機体は大丈夫かもしれないです。古いもの以外は。

 ちなみにロシアは、政治家の腐敗はあまりありません。政治家で腐敗しているような人間が居ると、すぐにプーチンにやられますから。しかし、役人の世界はすごい状況になっているということです。

 ブラジルのほうも腐敗はかなりひどい。ただ、もう一つブラジルの問題は治安です。ブラジルは、FIFAワールドカップに続いてオリンピックの開催地となりましたが、ちょっと信じられないくらい治安が悪い。一番悪いのがリオデジャネイロです。私もリオへ行ったとき、表を普通に歩けませんでした。それから、今、サンパウロも危ないです。ポルトアレグレという所が南のほうにありますが、あそこも今は、私を呼んでくれる会議の主催者から、「夜は表に出ないように」と言われます。今、ブラジルの運送費が非常に高い理由は、途中で荷物が盗まれてしまうからです。それくらい治安が悪いのです。


Keyword! : 腐敗指数ランキング(腐敗認識指数)

 腐敗認識指数(Corruption Perceptions Index, CPI)は、世界各国の汚職実態を監視する非政府組織(NGO)トランスペアレンシー・インターナショナル(TI)が、1995年以来毎年公開しているもので、公務員と政治家がどの程度腐敗していると認識されるか、その度合いを国際比較し、国別にランキング化したものである。

 当指数は、世界銀行腐敗指数 (World Bank corruption index) と並び、世界中の国々の腐敗に関して最も一般的に用いられる指標である。TI は調査対象の国の内外において、実業家やアナリストに対してその国の腐敗度の印象を尋ね、その結果をもとに指数を算出している。

 腐敗認識指数では、公共部門の汚職レベルを、「0(腐敗度が高い)」から、「100(腐敗度が低い)」 まで指数化している。2013年の調査では、世界177の国・地域を対象にランキング化した結果、腐敗度が最も低い国は、前年に引き続きデンマークとニュージーランドで91ポイント。次いで3位は、フィンランドとスウェーデンで89ポイント。5位はノルウェーとシンガポールで86ポイントだった。

 ちなみに日本は、前年の17位から後退し、18位(74ポイント)に。2011年は14位で、毎年順位を下げてきている。最下位は、前年同様8ポイントしかなかったアフガニスタンと北朝鮮とソマリアだった。


欧米のジャパナイゼーション

●20年間長期低迷の泥沼経済

 このところ、「欧州とアメリカのジャパナイゼーション(日本化)」ということがしきりに言われています。ジャパナイゼーションという言葉が、経済学者たちの間で新たなキーワードとして定着しつつあるのです。これは何かというと、「20年間長期低迷」という意味です。要するに、ボウリングでガターにはまってしまったボールがなかなか上がってこないという感じです。

 結局、ゼロ金利でも景気が浮揚せず、長期のデフレ危機に陥る懸念というのが、欧州でもアメリカでもささやかれるようになっています。両方とも、ご存じのように、ほぼゼロ金利です。ただ欧州のほうは、ソブリン危機(※1-3)が沈静化し、最悪期を脱したと思われます。

 日本は、見事、20年間もの長い間低迷をして、長期デフレという状況になっているわけですが、図-3のグラフから分かるのは、日本のGDPは1989年の12月がピークで、そこからずっと下降している。GDPの四半期ごとの推移を見ていると、このグラフのとおりほとんど伸びていない。

ところが、ラリー・サマーズ(米国の経済学者・元米財務長官)が、最近、2005年を起点にアメリカのGDP推移をグラフ化してみた。そうしたら、日本とほぼ同じパターンになっているということが分かりました。それを発表したら、皆びっくりしたわけです。「あれ、アメリカも日本と同じ曲線を描いている。つまり日本化ですか。金利もゼロですよね。それで景気浮揚しないんですよね。GDPも伸びないですよね」と。

 ラリー・サマーズは、自分がFRB(連邦準備制度)の議長になるものと思っていたら、イエレン(ジャネット・ルイス・イエレン/FRB史上初の女性議長)なんていう人がなってしまい、悔しくてこれを出したわけです。「今のような、バーナンキ(第14代FRB議長)とかイエレンのやっているような経済政策じゃここから抜け出せないよ」と。であれば答えを言ってください、と思うんですが、そこが彼の性格で、言わない。とにかく、「アメリカは日本になりました」というのです。


●ああ、従順な日本人

 しかし、日本とアメリカを一緒にするなど失礼な話です。もしアメリカが20年間低迷したならば、あの国では間違いなく暴動が起きます。一方、日本は、見事に20年低迷して、暴動のひとつも起きていませんし、失業率も4パーセントに過ぎません。ここが日本とアメリカの違いで、要は文部科学省の大勝利だということです。つまり日本は、文句も言わず、何事にもじっと耐えるという国民を作りあげたために、秩序を維持できているのです。そして、アメリカはそういう国民を作っていないということです。

 ジャパナイゼーション、嫌な言葉です。しかしこれで、アメリカも日本のよさが分かってきて、日本から学ぼうという雰囲気が、また出てくると思います。20年間低迷が続いても、従順な国民を作れば、平和で安全で安心な素晴らしい国になれるんだ、ということを、日本は世界に先駆けて示すことができると思います。このくらいの皮肉を言わないと気が晴れません。

 一方、欧州のGDP推移もグラフ化してみたら、「あれ、欧州も同じでは?」というわけです。欧州もジャパナイゼーションしていると。欧州も金利をゼロにしていますが、それでも景気は浮揚しない、と。過去100年間の、ケインズ以来のエコノミストというのは全部、金利を下げるかマネーサプライをするかで景気をよくしようと調整したわけです。この二つしかないんです。しかしアメリカも欧州も、両方使っても駄目だと。こういう話です。

 今、世の中は一昔前とは全く違う経済原理で動いています。マネーサプライをしても、国の中に吸収されなければ外国に行ってしまうのです。金利ゼロでも、先進国は欲しいものがないのです。だから需要につながらないのです。金利ゼロにしても失業率は改善しない。スキルがマッチしていないので当然です。ゼロ金利でも景気が浮揚しない、長期デフレの危機だということです。

 われわれは「全く新しいエコノミーに突入している」と言えます。私の『ボーダレスワールド』(1990年/プレジデント社)以降の本にはそういうふうに書いてあるのですが、エコノミストはああいう本を読まないんですね。



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