【無料お試し読み】 大前研一ビジネスジャーナルNo.2 「ユーザーは何を求めるか」


good.book発行書籍の中身をお見せします。興味を持っていただけましたら書籍版もよろしくお願いします。

※書籍版は下記リンクよりご覧ください。

大前研一総監修によるビジネスジャーナル第2弾

経営コンサルタント大前研一氏総監修によるビジネスメディア第2弾です。

世界中のニュース・各国現地視察からの一歩進んだ分析をお届けします。

メインコンテンツとして「経営者のみに限定公開された大前氏経営セミナー」の講義内容を編集・再構成し、大前氏インタビューを加え、鍵となるビジネストピックを豊富に収録しました。



『大前研一ビジネスジャーナルNo.2 「ユーザーは何を求めるか」』加速する、ビジネスモデル変化のスピードより


●音楽、映画、本。変化し続けるビジネスモデル

 以前、セミナーの勉強会で海外のメディア・ストリーミングの会社に幾つか行ったんですが、米国のパンドラメディア(ストリーミング型インターネットラジオを提供。単にリスナーのリクエスト曲を配信するのではなく、各ユーザー行動から嗜好に合う曲をレコメンドするというサービスを持つ)という会社も見てきました。その時はまだ音楽の世界はストリーミングよりダウンロードが中心でした。スティーブ・ジョブズでさえ、iPodを出した時には、ダウンロードだと言っていた。だから、パンドラに行った時、これってどうやって課金するんだろう? 知的財産権をどうやって管理するんだろう? と不思議でしたね。

 ところが今は、なんでもストリーミングです。10万曲を聴きたいだけ聴いてください、全部ストリーミングです、と。なぜこういうことが可能になったかというと、ユビキタスでかなりグレードの高いネットワークが世界中を繋ぐようになったからです。このネットワークを使い、聴きたい音楽にはすべてクラウド上でアクセスできるため、もうダウンロードする必要もなくなったのです。それで、月々9ドル99セントで好きな曲を10万曲聴くといったことができるようになったわけです。

 そうしたら今度は、ネットフリックスのような会社が「映画もストリーミングでどうぞ」と言い始めた。好きな映画を何千本とストリーミングで観ることができると言うんです。これも回線状況がすごく良くなったためです。こうして、音楽と同じように映画も月々9ドル99セントで見放題と。

 ネットフリックスはそれだけではなくて、「あなたは過去にこんな映画を観ていますよ。あたなのような方にはこんな映画がお薦めです」と言ってレコメンデーションも出しています。そうすると、暇なら、じゃあちょっと観てみようかなと思ってどんどん観ちゃうんですよね。このレコメンデーション機能というのが、ネットフリックスにはまってしまう人が多い理由のひとつです。

 音楽、映画と来たら次は本です、ということで、アマゾンが「本を10万冊好きなだけ読んでください。月々9ドル99セントです」と言い始めた。「もう一冊ずつ買わなくていいんです」と。これには出版社がメチャクチャ怒って、「冗談じゃない、俺たちをなんだと思ってるんだ」と抗議した。そうしたらアマゾンは、抗議したところを会社ごと買っちゃうんです。あるいは、その会社が出している本の在庫を全部買ってしまう。こうなってくると、アマゾンのサービスは、グーグルと真っ向からぶつかっちゃうわけです。

 グーグルという会社は、もともと世界中の情報をネットに集めたいと思ってスタートしました。本でも何でも、全ての情報を集めたいと。百科事典も国会図書館にある本も、全部ネットに入れたいと。それからストリートビューで世界中の道路情報を集めたいと。最近も、アブダビの砂漠のストリートビューを撮影するために、車じゃなくてラクダを使っていました。ラクダのこぶの上に360度カメラを付けて撮影した砂漠のストリートビューっていうのは、私も初めて見ましたけど、面白いですよね。


●光のスピードで「情報」をキャッチする若者たち

 とにかく、パンドラメディアにしてもネットフリックスにしてもアマゾンやグーグルにしても、とどまるところを知らない。今の世界は光のスピードでどんどん進んでいるわけです。だから、世界の状況というのは2年前と全然違うよ、と。iPodで「これからはダウンロードだ」と言っていたアップルも、ストリーミングの会社を数千億円で買わざるを得なかったわけです。アップルはiPodを持っていたために、ストリーミングサービスという流れに遅れてしまった。だから数千億円をかけてキャッチアップしなくちゃいけなくなったんです。

 私が今言いたいのは、この変化のスピードを追いかけることが大事だということ。最先端の「情報」を見ながら、誰が誰に対して何をやっているのか、ということを常に追いかけていないと、この世界から大きく遅れてしまう、ということです。

 シリコンバレーというのは、言ってみれば非常に滑りやすいスケート場みたいな所です。そこに乗っかっていってワルツを踊りながら、世界がどういう方向に行っているのかを見ていないと、旧世代の爬虫類になってしまいます。

 実は、世界中の若者が今、この光のスピードで同じ「情報」を吸収しています。だから、私が今話したことは、世界中の若者の多くは知っていることですよ。

 昔の日本人はみんな、おばあちゃんから『竹取物語』などの日本のおとぎ話を聞いて育った。これって非常にローカルで場所にスペシフィックなものです。その次の世代は、同世代で共通の言語を持つようになった。例えば、「ファイナルファンタジー」のように世界中の子がみんな同じ遊びをしていたわけです。ここで横のつながりができるようになった。一方、前の世代とは縦の断絶が発生した。さらに今の世代は、スマホの情報検索のような形で「情報」をすべて共有している。世界中の若い世代が今、共通言語で一気につながりつつあります。韓国にしろ、米国にしろ、インドにしろ、世界中で「情報」の共有が進んでいるというわけです。


テクノロジー × somethingの掛け算が、新たなビジネスを生む

●メディカル × ビッグデータ

 だから私は、今度シリコンバレーに行く時には、その時点で最先端だと思う会社を見にいこうと思っています。特に見てきたいのはメディカル関連です。すごいテクノロジーを持った会社があって、染色体の分析などを行っている。今、一番注目されている会社は、人の血液1滴で200種類くらいの様々な分析ができる技術を持っている。こういう会社が出てきているんです。

 それから、ビッグデータを使って薬の開発もしています。ビッグデータの使い方で最も恩恵があるのは創薬です。これまでは、薬の開発をしようと思ったら、化合物を作ってウサギでテストして、毒性のテストをして、十何年という時間をかけていた。1000回のうち1回しか当たらない石油掘削と同じようなことをやってきたんです。でも、今はビッグデータを使って非常に簡単にいろいろなことが分かるようになってきた。

 だから、これまではメディカルというと化学屋さんとか薬学屋さんが多かったのに、今ではもうビッグデータを分析できるデータベース屋さんが非常に大きな力を持つようになってきているわけです。IBM なんかは最近あまり稼げるものがなくなってきているんですが、薬品会社はこういう話をIBMから聞かされると、「ほう、そうですか。薬の開発は、ビッグデータでやるんですか」とコロッと参ってしまう。それで最近は、IT企業と組んで、こういう薬の開発をしましょう、という薬品会社が結構出てきているんです。


●画像認識 × something

 ただ、このビッグデータの分野には、まだまやかしが多い。例えば、ビッグデータに関する講演を聴きに行くと、まだできてもいないのに、「このデータで新しいソリューションを生み出すことができます」というような話をしていて、最後シラケてくるんです。「じゃあそのソリューションの実物を見せてくれよ」と言うと、「いや、もうそろそろ、そういうこともできると思っています」という感じです。実際に、ビッグデータを使ってソリューションを実用化して世の中をギャフンと言わせられないとダメですよ。

 「画像認識」の分野でも、今ビッグデータと結びつけて新しい技術が発達しつつあります。

 画像認識技術というのは、かなり昔から各国で研究・開発されてきたのですが、今米国や英国では、人の顔を瞬間的に画像分析して「こいつはテロリストのリストに挙がっているやつだ」というのが分かる装置があります。イスラム国の兵士も、顔の一部を画像分析して「あいつは英国人の何々に違いない」と、MI-5(英国情報局保安部)あたりが割り出してしまった。こういう画像認識の技術が今後ますます進歩したら、セコムのようなセキュリティ会社も大分変わるでしょうね。

 画像認識とビッグデータで瞬時に人の顔が認識できれば、前科のある人間なら全員分かります。今の赤外線を使ったセキュリティシステムのようなものは要らなくなるわけです。また、パスポートに使う写真をビッグデータに結びつけることができたら、犯罪者やテロリストの摘発も簡単にできるようになります。

ビッグデータの活用においては、漠然とした分かりにくい話をするよりも、「具体的にこういうふうに使えるよ」という話をして、それで若い人に「何か考えてごらん」と言えば、割と早く新しいシステムができます。ちなみに私は幾つか特許を持っていますが、この画像認識の領域でも特許を持っているんです。高速道路で「この先の料金所付近で○キロ渋滞です」とか表示されますよね。でもあんなもの何の役にも立ちません。みんな、渋滞の距離じゃなくて、渋滞を抜けるのに“何分かかるか”が知りたいわけです。

 そこで私は、今から30年近く前に「渋滞の状況を画像認識できれば、時間に換算できるはずだ」と考えた。渋滞エリアを走っているある車が、A地点からB地点まで何分かかったかを計って、それを何十台か分析すればトータルの渋滞時間が算出できるんです。それで特許を取った。このように画像認識というのは、結構いろんな使い方ができる。ビッグデータの力と瞬時に画像認識する力を合わせれば、相当いろんなことができるはずです。

 ということで、皆さんもぜひ、こういうことをただ知識として学ぶだけではなくて、知識がある程度たまってきたら、それを使ってどんな商売ができるか、それを使ってエスタブリッシュメントをどうやって倒せるか、こういうことを考えるために時間を使っていただきたい。従来の日本人は吸収だ吸収だ、勉強だ勉強だと言って「勉強したね、学んだね」と満足していましたが、学ぶだけではダメです。学んだことを使って、何かを破壊する、そして新しい秩序を作る、さらに自分のお金になることを考える、そういうことを考える癖をつけないと意味がないですよ。今、世界中で若い人たちが、急激に起業の力をつけてきている最大の理由は、彼らがそれを実践しているからだと思いますね。



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