【無料お試し読み】 大前研一ビジネスジャーナルNo.5 「2040年の崩壊 人口減少の衝撃/地域活性化の現状と課題」

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※書籍版は下記リンクよりご覧ください。

大前研一総監修によるビジネスジャーナル第5弾

大前氏による経営セミナーを中心にまとめた書籍シリーズです。

今回のテーマは、日本がナショナルアジェンダとして直面する「人口減少」と「地域活性化」を取り上げ、"未来に日本を存続させるため"、今すぐ対応しなければならない課題を明らかにします。


『大前研一ビジネスジャーナルNo.5 「2040年の崩壊 人口減少の衝撃/地域活性化の現状と課題」』Chapter1より


2040年の日本への「重大な警告」

●2040年、日本の社会保障制度は破綻する?

 人口減少は、日本経済にとって最大の問題です。何が問題なのかと言うと、日本だけでなく世界を見ても、ここまで大幅な人口減少を経験した先進国は他にないのです。この問題を、制度と数字の面から検証していきます。

 図-1を見てください。真ん中の15~64歳の部分が生産年齢人口、働く可能性のある人口です。この生産年齢人口が下がりだしており、人口全体としても2014年あたりをピークに下がり続けていきます。2065年ごろには、65歳以上の人口の割合が、社会保障費を負担する側の割合より多くなります。これでは国が維持できません。限られた生産年齢人口が、警察・自衛隊・消防など力の必要な仕事に優先的に就くとすれば、一般企業は若い人を雇用することができなくなります。逆の言い方をすると、一般企業が若い人を雇用すれば、国防さえも危うい状況になるのです。

 来年の経済がどうなるか、確実な予言は誰にもできませんが、未来を極めて正確に予見できる指標がひとつだけあります。それがこの「人口動態」です。


●2040年には「85歳以上」の人口が最も多くなる

 次に図-2を見てください。第二次世界大戦直後、第一次ベビーブームの時期に生まれた「団塊の世代」が、2010年時点で60~64歳になっています。団塊の世代の子供たち、「団塊ジュニア」は35~39歳。2025年になると、団塊の世代が75~79歳、団塊ジュニアが50~54歳。団塊ジュニアが働き盛りです。そして2040年になると、団塊の世代、すなわち85歳以上の人口が一番多くなります。2060年になると、高齢化はさらに顕著になりますね。

 今、田舎の村に行くと、若い人がほとんどいない。既に一番右側のグラフのような人口構造になっています。このままいけば、30年、40年経っても労働力人口が増えず、日本全体で高齢化が進むことが確実に予見できるのです。


●結婚しない、子供を増やさない「団塊ジュニア」

 図-2、2010年のグラフから、日本の問題がもうひとつ読み取れます。60~64歳を迎えている「団塊の世代」の下方に、35~39歳の「団塊ジュニア」のピークがあります。団塊の世代が25歳くらいで子供を産み、そのピークが正確に来ているのです。

 同様に、団塊ジュニアが皆結婚して子供を生んでいれば、5~9歳のところにもう一度ピークが来るはずですが、そうはなっていません。団塊ジュニア世代は3分の1が結婚していないのです。結婚したとしても、少子化で、1組の夫婦に子供が1人という家庭が多い。夫婦2人に対して子供1人の割合ですから、ピークが来るはずがない。夫婦2人で子供が2人いれば、次のピークが来るのですが。いくら待っても、「ジュニアジュニア」が生まれてこないのです。これは人口統計学上、日本に対する重大な警告になるはずなのですが、誰もそのことを指摘しません。


人口減少が「国債暴落」の引き金に

●人口減少により、日本経済は縮小スパイラルに

 人口減少は、日本経済にさまざまなマイナスの影響を与えます。まず、労働力人口が減少し、当然経済成長率が下がって税収も減ります。さらに消費者が減少して、商品を売る相手が減ってしまう。住宅需要も縮小します。自治体は人口が1万人を切ると病院などの社会インフラが維持できないので、地域そのものが消失するという事態も起こってきます。2040年に消滅している可能性がある自治体は896にのぼるというデータもあります(日本創成会議調べ。本稿Chapter4に詳細)。

 これらの要因により、日本経済は縮小スパイラルに突入します。人口減少が国債暴落のトリガーになることも十分考えられます。日本国債は、いつ暴落してもおかしくない状況です。増え続ける債務を抱え、それを返済する人が減っていく以上、物理現象として、国債デフォルト、ハイパーインフレが起こります。来週かもしれないし、5年くらいはもつかもしれませんが、いずれは必ずそういうことが起こるでしょう。


●「女性」「高齢者」活用では、労働力不足をカバーできない

 このような状況にもかかわらず、政府が国土強靱化基本計画※1や東日本大震災からの復興計画などに伴う公共事業を増やしているので、いびつな形で、一部の業種、特に建設業の人手が大幅に不足する事態になっています(図-4)。

 図-5を見ていただきたい。15歳以上の人口は、おおよそ「労働力人口」と、高齢者・子供・専業主婦などの「非労働力人口」に分かれます。労働力人口は、1999年に6793万人とピークを打ちまして、2013年には6577万人まで減少しています。一方、非労働力人口は4506万人。

 安倍晋三首相は「女性を戦力に」という成長戦略を掲げています。また、2013年4月には、「高年齢者雇用安定法」が改正され、60歳で定年を迎えた後も希望者全員を引き続き雇用することが企業に求められるようになりました。こうしたこともあり、既に多くの高齢者が、定年後も働き続けることを選んでいます。皆が定年通り退職すると、生産年齢人口は年間およそ80万人ずつ減っていく計算になるのですが、今減っているのは年間およそ30万人。約50万人が定年を延長している計算になります。

 ところが図-5の右側のグラフを見てください。女性と高齢者を最大限に活用しても、2030年には労働力人口が292万人不足します。2060年には1785万人不足ということで、非常に厳しい状況になります。特に、力仕事を伴う警察、消防、自衛隊などでは、女性や高齢者を増やすにも限りがあります。


国債暴落のシナリオは回避できるか

●人口減少に対し、何ひとつ有効な打ち手を持たない日本

 労働力人口が減少し経済が縮小することが予見できる状況になれば、通常、国が何らかの対策を採ります。人口減少を食い止めなければ、経済成長はおろか、国を維持することさえできないわけですから。採るべき打ち手は非常にはっきりしていますが、結論から言えば、日本はこれまで何ひとつ有効な対策を採ることができていません。

 人口問題に対する第一の解決策は、「子供を増やすこと」です。フランスでは、子供を産みやすくするための制度を作りました。日本でもこのような政策を実現できるかどうか。Chapter2で詳述します。

■注釈■

※1 国土強靱化基本計画:大規模自然災害などに備えて人命を守り、また経済への被害を最低限にとどめるために、ハザードマップの作成、堤防の整備など、ソフト/ハード両面からさまざまな施策を行うための基本計画。2014年6月に閣議決定された。



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