【無料お試し読み】 大前研一ビジネスジャーナル No.8(アイドルエコノミー~空いているものに隠れたビジネスチャンス~)

good.book発行書籍の中身をお見せします。興味を持っていただけましたら書籍版もよろしくお願いします。

※書籍版は下記リンクよりご覧ください。

本号では、これまで「3C分析」「ボーダレス・ワールド」といった経営概念を発信し続けてきた大前研一が2015年に新しく打ち出すキーワード、「アイドルエコノミー」をメインテーマとして収録しました。

AirbnbやUberに代表される、ネットワーク技術の発達を背景に台頭してきたモノ・人・情報をシェア/マッチングするビジネスモデルについて国内外の事例を挙げて解説します。

これらのビジネスモデルの成功のポイントとは何か。いかに既存ビジネスプレイヤーは対抗するべきなのか。政府・企業・個人の視点から今やるべきことを大前研一が示します。

・掲載事例:

Airbnb/Uber/Upwork/ラクスル/Houzz/全国タクシーアプリ/LINE NEWS/WeWork/他



『大前研一ビジネスジャーナル No.8(アイドルエコノミー~空いているものに隠れたビジネスチャンス~) 』Chapter1より


成熟時代のビジネスモデルとなるアイドルエコノミー

 これまで私は、10年に1回くらいのペースで、経営に関する新たなキーワードを提示してきました。『企業参謀』での3C分析 、Borderless World(国境なき世界) 、Invisible Continent(見えない経済大陸) に次ぐ新しい概念として、今日は「アイドルエコノミー」という考え方を皆さんにご紹介したいと思います。

 「Idle」とは、「使用されていない」「遊んでいる」という意味の形容詞です。今、特に先進国ではものが溢れています。一方で、その操業度が不足している。つまり、ものばかりがたくさんあって、それを使う人がいない状態なのです。そして実はインターネットの発達によって、「使われていないもの」を簡単に見つけることができるようになっています。インターネットで、空いているものと、それを必要とする人をつなぐことで、それまで無駄になっていたものに新たな価値が生まれるのです。需要と供給を特別な価格で結びつけ、アービトラージ(サヤ取り売買) で利益を得る経営戦略、それが「アイドルエコノミー」です。


アイドルエコノミー急増の背景

●自動車、家電、住宅…増え続ける「アイドル」

 最初に、図-1を見ていただきたい。日本では、自動車、家電、住宅の普及率は非常に高くなっています。自動車は世帯あたり1台を超えています。しかし、今この瞬間、日本中の自家用車をカメラでパッと映したら、動いていない車のほうが圧倒的に多いでしょう。つまりこれが「アイドル」です。

 図-1の真ん中のグラフ、家電製品も同様です。温水洗浄便座などはその最たるもので、ほとんどの時間は使われていません。さすがに空いている温水便座をビジネスに結びつけることは難しいと考えるかもしれませんが、実は米国に「Airpnp」というサービスがあります。トイレを貸したい人が登録しておくと、借りたい人が地図で検索して利用することができるのです。笑い話のようですが、先進国ではそれほどアイドルエコノミーが一般的になっています。

 図-1、一番右のグラフは総住宅数と空き家率を示しています。13.5%が空き家である国はほとんどないのですが、日本は少子高齢化で人口減少が進んでいきますから、今後もこの割合は増えていくでしょう。もはや35年ローンを組んで4千万円で新築の家を買う必要はまったくなくなっていきます。空いている家を使えばいいわけですから。

●新しいものが売れない「低欲望社会」日本

 高度成長期の日本は、製品を「売る」「買う」「使う」ことを繰り返して驚異的な経済成長を成し遂げました。しかし、立ち止まって振り返ってみると、今や使われていないものばかりが周囲に溢れています。

 『低欲望社会』(図-2)という本に書いた通り、現在の日本はものが売れない時代に入っています。新しいものは買わないけれど、「ちょっとこんなことがしたい」というささやかな願望はある。それがスマートフォンで簡単に使えるサービスであれば使ってみたい――ここにアイドルエコノミーの事業機会が生まれるのです。

●「シェア」の概念を変えるアイドルエコノミー

 図-3を見ていただきたい。成長期の販売モデルが成り立たなくなった先進国では「シェア」の時代がやってきます。人々が持っているリソースをマッチングするというやり方です。カーシェアリング、シェアハウス、駐車場のシェアなどさまざまなビジネスがありますが、何であれ「所有しているものを他の人に使ってもらう」という考え方です。

 ところが図-3の一番右側、シェアモデルからさらに進化したアイドルエコノミーでは、自分で所有する必要がないのです。空いているリソースの情報を使いたい人に提供してアービトラージし、利益を得るのです。このように、自分が固定費を抱え込まなくていいというやり方が有効になっているのです。

インターネットがエージェント(代理店)になる

●ネットビジネスで成功するための鍵とは?

 メーカーが物を作り、販売会社や代理店を通じて販売するのが、従来型の一般的なビジネスモデルです。しかしアイドルエコノミーにおいては、インターネットが代理店、エージェントの役割を果たします。この方法で急成長する会社が増えています。

 この新しいやり方では、後続の競合相手に追い抜かれないために、先行者がかなり注意深くビジネスモデルを作る必要があります。インターネットオークションサービス「ヤフオク!」の例においても、これまでになかったビジネスモデルですから、最初は当然、利用者の間でいろいろなトラブルが起こります。しかし、購入者が出品者を評価する仕組みを用意しておき、「この人との取引はスムーズでした」「あの人が売っているのはまがいものです」など、口コミによるレピュテーション(評価・評判)が定着してくると、信用できないユーザーは淘汰されていきます。

 このように、互いの顔が見えないインターネット上でも信頼して取引できる仕掛けを作れば、皆がその場所を利用するようになり、勝ち抜けることができます。これが「インターネットをエージェントとして利用する」ビジネスの成功の鍵になります。


●既存の業界秩序を破壊するアイドルエコノミー

 インターネットをエージェントとして利用することで、アイドルエコノミーはあらゆる業種に急速に広がっています。図-4を見てください。

 タクシー業界では、配車アプリの「Uber」(Chapter2参照)。ホテル業界では、個人の所有する空き部屋を仲介するビジネスモデルで世界第5位のホテル予約サイトに上りつめた「Airbnb」(Chapter2参照)。リフォーム業界では、リフォームしたい人と専門家をつなぐ「Houzz」(Chapter3参照)。

 システム開発では、世界最大のクラウドソーシング 企業「Upwork(旧oDesk)」を筆頭に、プレイヤーが次々参入しています。日本では「クラウドワークス」が最大手です。印刷業界では日本の「ラクスル」(Chapter4参照)に資本が集まっています。自社は印刷機械を持たず、印刷会社の空いている機械を活用してチラシや名刺などを印刷するというビジネスモデルです。

 メディア業界にも大変革が起こっています。「LINE NEWS」や「グノシー」など、自社に記者を置かずにニュースを集めてくる、いわゆるニュースキュレーションサービスの台頭です。「LINE NEWS」や「SmartNews」のアプリダウンロード数は、今や読売新聞の発行部数を上回っています(Chapter4参照)。

 このように、インターネットをエージェントにしたアイドルエコノミーというものが、この2~3年の間に、驚くほどたくさん出てきているのです。Chapter2以降、その事例を詳細に見ていきます。



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