【無料お試し読み】 大前研一ビジネスジャーナル No.9(世界のリゾート&ツーリズム徹底研究~インバウンド時代の観光産業を生み出す仕掛け~)

good.book発行書籍の中身をお見せします。興味を持っていただけましたら書籍版もよろしくお願いします。

※書籍版は下記リンクよりご覧ください。

■世界のリゾート&ツーリズム徹底研究

「インバウンドをビジネスとしてとらえるコンセプトを徹底解説」

2015年訪日外国人が1900万人を突破。

•伸び続ける「インバウンド需要」。

•過熱する「爆買い」。

本書では、インバウンドビジネス熱の高まりの中、いかに長期的視点に立って「観光産業」「ツーリストビジネス」をビジネスとして確立させるか、大前研一が解説します。

世界中から集客する「日本が学ぶべき世界の魅力的なリゾート」の事例を通して、これからの日本企業・地方が取り組むべき“観光産業の課題”について考えます。

観光産業・インバウンドビジネスに従事する方はもちろん、「地方創生」「まちブランディング」といったテーマに興味をお持ちの方にもお薦めします。


『大前研一ビジネスジャーナル No.9(世界のリゾート&ツーリズム徹底研究~インバウンド時代の観光産業を生み出す仕掛け~)』Chapter1より


地方振興の打ち手としてのリゾート開発

 今、日本では少子高齢化が進み、2040年には日本の市町村の50%が消滅するという試算もあります。日本経済が縮小スパイラルに突入するリスクが高まる中、地域活性化の打ち手の一つとして考えられるのが「リゾート開発」です(図-1)。

 幸い日本には、治安がよく、料理がおいしく、山や海、温泉などの自然に恵まれているという観光地としてのメリットがあります。これらを活かし、世界の富裕層、特にアジアの富裕層を日本国内に呼び込むことができるかが、日本の地方振興にとって重要な鍵になると考えられます。

日本の観光産業は「大赤字」

●観光産業は、6.8兆ドルの巨大市場

 まず、日本の観光産業の現状をデータと共に検証していきましょう。図-2の左側を見ていただきたい。世界における観光産業(Travel&Tourism)の規模は6.8兆ドル。金融産業(Financial Services)やIT産業(Communication Services)と並び、世界五大産業の一つです。

 その規模は、今や自動車産業よりも大きくなっています。右側のグラフにある通り、雇用者数では観光産業が第2位です。世界中で1億人以上が観光産業に従事しているということが分かります。

 ところが日本では、長い間「観光」を産業と見なしていませんでした。大手旅行会社が熱心に修学旅行の斡旋をするくらいで、国や地方が一体となって観光産業の振興に取り組むということをしてこなかったのです。


●日本の観光産業は160億ドルの赤字

 その結果、何が起こったか。図-3の右側のグラフを見ていただきたい。国際観光収支で言うと、日本は160億ドルの大赤字という状況です。2013年時点では海外から来るお客さんよりも、国外に出ていく日本人の方が多いということです。日本国内に魅力のあるところがないので、日本に来る外国人が増えても、海外に出ていく日本人の方が多くなってしまうのです(図-3、左側のグラフ)。

 海外からの観光客を積極的に呼び込まなければ、この赤字は今後ますます拡大する可能性があります。(編集部注:日本政府観光局(JNTO)の統計によると、2015年の訪日外国人数は1900万人を超え、45年振りに訪日外国人数と出国日本人数が逆転した。)


●外国人観光客1000万人は「情けない数字」

 OECD加盟国の、GDPに占める観光産業の割合を表したグラフを見ていただきたい(図-4)。平均値が9.4%のところ、日本は6.7%とやはり低い割合です。

 先進国では、ふつう、観光産業の割合が大きくなるものですが、日本ではこの分野があまり伸びていません。観光という世界五大産業の一つで、先進国にふさわしいシェアを取れていないのです。

 日本の経済規模から言えば、本来ならば年間3000万人の外国人観光客を呼び込んでしかるべきなのです。しかし、現状はおよそ1000万人。情けない実績と言わざるを得ません。では、どこから残り2000万人を呼び込むか。これは、主に中国からということになるでしょう。中国人観光客、中でも富裕層をいかに獲得するかが、日本の観光振興にとって非常に重要です。


日本の観光産業最大の課題は「富裕層の獲得」

●訪日外国人が増えても、旅館の市場規模は縮小

 次に図-5、一番右のグラフを見ていただきたい。訪日外国人旅行者は増えているにもかかわらず、国内旅館の市場規模が大幅に縮小しています。かつて年間およそ35兆円を誇った旅館の市場規模が、2013年には半分以下の約14兆円まで縮小しているのです。

 外国人観光客はリゾートホテルやシティホテルに集まり、高級ホテルと格安宿泊施設の狭間に位置する伝統的な旅館は、中途半端な位置づけになってしまっています。旅館の市場規模が縮小する一方、外資系のホテルチェーンが日本進出を加速させるという皮肉な状況です。

●欧米に比べ日本の滞在費用は「割安」

 次に世界各都市の4つ星ホテルの滞在費、夕食費、タクシー代の価格水準を見ていただきたい(図-6)。まず一番左、4つ星ホテルの1泊あたり滞在費ですが、東京が辛うじて12位に入っているくらいで、先進国の中では比較的割安になっています。次に真ん中の表、夕食のフルコース2人分とボトルワイン1本の価格を比較しても、東京は12位で、1位のスウェーデンに比べ半額ほどです。一番右の表のタクシー代では、東京が唯一トップ10に入っていますが、欧州と比較するとやはり割安です。

 日本は20年という長期間にわたりデフレが続いたために、観光客の滞在費用に関しても、格安でもなければ高級感もない、中途半端な価格帯になっていることが分かります。


●「中途半端」な日本の観光地

 今、世界のホテルやリゾートは「ラグジュアリー」と「エコノミー」に二極化しています。欧米の超一流ホテルやアジアの超高級リゾートが富裕層の支持を集める一方、一般の観光客は、格安ホテルや海水浴場、スキー場など手軽に楽しめる場所に集まります。そんな中、日本はホテルや旅館の価格もサービスも「そこそこ」、ラグジュアリーでもエコノミーでもないという中途半端な立ち位置になっていることが一番の問題です。

 日本に来る中国人観光客が増加していますが、日本には富裕層が滞在するような本格的なリゾートがありませんから、上海発3泊4日、5万2400円というようなパッケージツアーで日本にやってきて、十数万円分の商品を爆買いして帰っていくというパターンが多いです。

 一方では中国の富裕層が、1泊1人10万円以上かかるような東南アジアのスーパーラグジュアリーリゾートに家族で滞在し、ものすごい大金を落としています。日本もラグジュアリーリゾートに力を入れ、このような層を取り込んでいく必要があります。

●日本の観光産業は“富裕層”を獲得できていない

 中国の富裕層は、数十万人にのぼるとも言われています。彼らが1年間に旅行で使うお金が、平均して約2700万円です。世界各国で高級リゾートを展開するシックスセンシズ ホテル リゾート スパ(以下 シックスセンシズ)などがターゲットにしているのは、このような人たちです。

 中国経済の成長に伴って急にお金持ちになった彼らは、お金を使いたくて仕方がないのです。私が知っている例では、ある中国のお金持ちが北海道に別荘を買いに来ました。予定の価格は2億円でした。ところが北海道中探しても、2億円の別荘は見つからず、その中国人は「Too cheap!(安過ぎる!)」と言って帰ってしまったそうです。当時、北海道で一番高い別荘が約5000万円だったのです 。

 最近では中国企業ティエンズが、社員旅行の費用を全額負担して従業員6400人をフランスのリゾートに連れていったことが話題になりました。4日間の日程で約18億円を旅行に費やしたとも言われていますが、富裕層はそういうお金の使い方をします。この富裕層を顧客として獲得できていないことが、日本の観光産業における大きな問題なのです。


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