【無料お試し読み】 マッキンゼー現代の経営戦略 2014年新装版

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『マッキンゼー現代の経営戦略 2014年新装版』〈序章〉より


――経営者は低成長にいかに対処すべきか

 現代は「不確実性の時代」だといわれています。私どももそのことを否定するつもりはありません。しかし、企業戦略立案をお手伝いする人間として、そうだからといって立ち止まってしまうわけにはいかない宿命を負っています。

 だいたい、いくら不確実性の時代とはいっても、その中身を少しずつみる、あるいは現在すでに明らかな兆候として出ている事柄をとらえていけば、八〇年代に向けて、何らかの展開を図っていくことはできるはずです。

 ということで、本セミナーの序論として、まず「新しい企業環境とその戦略的意味」をながめていきたいと思います。

八〇年代を占う六要素

 図0―1のように成長、景気、資源、国際、雇用、技術という、経営戦略に大きな影響を及ぼす六つの要素に分けて、八〇年代を展望してみます。

 総括的にいうと、まず成長については低成長が永続する。景気はインフレが不可逆的に進行する。経営資源は人、金、原材料などいろいろあるが、この偏在化の傾向がますます強まる。それをならそうという点において、硬直化現象が起こってくる。国際情勢は従来いわれていたよりもはるかに変転する。

 さらに、インフレを克服しようとすると、雇用の確保が非常に難しくなる。また、高度福祉社会と雇用確保ということの矛盾がいっそう拡大していく。そういうことにもかかわらず、技術革新はどんどん進んでいくだろう。

――総括的にいうとそういうことですが、六つの要素を個別に、もう少し詳しく吟味してみましょう。


低成長の四つの背景要因


(1)政策的な景気刺激

 まず低成長の永続ということですが、この背景となっている要因には、政策的な景気刺激、人口動態の成熟、基幹市場の成熟、国際競争力の失墜、の四つがあります。

 最初の政策的景気刺激というのは、この低成長の永続に対して、七%成長を達成しようとかいう反動が出てきているということです。その結果予想される変化としては当然、大きな政府ということになって、政府が財政をコントロールする部分が増えてくるわけです。

 こういう傾向に対して企業にどういう対応策があるかを考えてみますと、国政、地方政治に積極的に参加していく必要が出てきます。

 たとえばアメリカの政府は日本の政府よりも大きな政府です。政府部門のGNPに占める割合いは日本よりも大きい。そこでゼネラル・エレクトリック(GE)社のジョーンズ会長などは、フェアフィールドの本社で過ごす時間よりもワシントン(政府)で過ごす時間のほうが多いといわれています。国の政策立案者に対して自分の持てる影響力を行使したほうが、社内の人間に対してそれを行使するよりも効果が大きいということを、公的にも発表しています。そういう面をみても、大きな政府のもつ意味は企業にとってかなり重要であるといえます。

 とにかくこのように自然の成り行き(つまり低成長)よりも早いスピードで政府による景気刺激が行なわれる結果、企業としては事業間の資源シフト能力が十分でない場合には取り残されてしまいます。政府というのは非常にムラ気なところがあるので、企業がどういう分野に資源を注ぎ込んでおいたらいいかということは、あまり長期的に予測することはできません。そういう点で、固定費の変動費化によって企業がどちらにも対応できる態勢をとる必要が、従来にも増して必要になってきました。


(2)人口動態の成熟

 次の人口動態の成熟ということは、良質、廉価な労働力の供給力が止まることで、高齢化、高賃金化を余儀なくされます。したがって、企業はこれらの原因になっている年功序列、終身雇用といった制度の見直しをする必要が出てきます。現実に多くの会社でここ二~三年、この問題がかなり中心的な戦略的テーマにあがってきているわけです。


(3)基幹市場の成熟

 第三の基幹市場の成熟ということは、すなわち限られたパイ、増えないパイをめぐって市場競争が激化することになるので、競争に勝つ能力を社内的に蓄えなくてはいけません。したがって、ここでの企業の対応策は、意思決定あるいは戦略立案の機能の抜本的な強化ということになります。また市場制覇力が要求され、制覇できない市場における事業収益あるいは事業の将来は非常に暗くなる、といった現象が起こっています。

 ところで、成熟期――すなわち低成長がかもし出す成熟したマーケットを本当に理解するためには、その前の成長期の理解から始める必要があるのではないでしょうか。

 われわれは成長期には二つのタイプがあると考えています(図0―2)。一つは「置換」と呼ばれる成長のタイプで、従来製品が衰退し、それをある別の製品が置換していくタイプ。もう一つのタイプは「浸透」と呼ぶべきもので、もともと潜在購買力はあったわけですが、新しいものが出てきて、それが需要層に浸透していく。日本の場合には購買力そのものが一定ではなく、成長期には年々上がっていたので、だんだん高くなる天井に向けて浸透を完了し、ここで成熟という現象が起こるわけです。

 置換は必ず何らかの駆動力によって引き起こされます。たとえば競争力という点で、ブルドーザがパワーシャベルに置換される。これは、より汎用性の高いパワーシャベルに置換されるという意味で、〝汎用性〟ということが駆動力になっています。以下、白黒テレビからカラーテレビへのグレードアップ(上級移行)という置換の駆動力はよりきれいに見たいという〝欲求〟、逆に一眼レフからポケットカメラへというグレードダウン(下級移行)の置換は〝高感度フィルム〟の発明が駆動力になっており、また〝便利さやコスト〟が駆動力になって注文服から既製服に置き換わる標準化という置換もあります。

 もう一つの成長の原因である浸透は、大きく分けて資本財と消費財について考えることができます。資本財は、おもしろいことに自分自身では成長の意思をもっていません。たとえば工作機械をとると、これを床の間に飾りたいから買うというのは非常に奇特な人で、だいたいは自動車をたくさん「つくるために」買わなくてはいけない。〝ねばならぬ〟という環境です。タンカーを飾っておく人はいないのであって、日本で石油の需要があり、その需要を「満たすために」運搬しなくてはいけない、という他律的な需要の発生方法です。発電所、製鉄所についても、もちろん同じです。これに対して消費財はどちらかというと任意性があり、ピアノがなくても死んでしまうわけではない。むしろ、これは願望に基づいて浸透が始まっているわけです。

 だから、こちらのタイプの成長の場合、成熟した暁の特徴として、置換する製品の需要を大きく超えることはできません。これが一つの特徴です。それから、ユーザーが何らかの経済計算、利害得失の計算をやって、置換していくわけですから、自ら置換されるおそれもあります。より優れたもの、より駆動力の強いもの、に遭遇すると当然、自分自身が置換の対象になるわけです(図0―3)。

 

 

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