【無料お試し読み】 BBTリアルタイム・オンライン・ケーススタディ Vol.16

good.book発行書籍の中身をお見せします。興味を持っていただけましたら書籍版もよろしくお願いします。

※書籍版は下記リンクよりご覧ください。

本書掲載のケーススタディはビジネス・ブレークスルー大学(以下BBT大学)提供のReal Time Online Case Study(略称、RTOCS)を基に収録したものです。RTOCSとは実際の企業や団体を取り上げ、「誰も正解を知らない現在進行形の経営課題」に対し、「実践」と「議論」による徹底的な論理的考察を経ることで、企業が直面している「本質的問題」を明らかにし、「経営者の視点で意思決定」を行う教育メソッドです。


『BBTリアルタイム・オンライン・ケーススタディ Vol.16』CaseStudy1より


~もしも私がツムラの社長だったら~

※本解説は2014/7/20放送のRTOCS®を基に編集・収録しています。

大前の考える今回のケースにおける課題とは

 漢方メーカーのツムラは、かつて主力漢方薬の副作用問題と多角経営の失敗により経営危機に直面したが、赤字子会社の整理、家庭用品事業からの撤退により医療用漢方製剤に集中、医療現場における地道な漢方の普及・啓蒙活動により業績を回復し、現在も医療用漢方市場において独占的なシェアを誇り、高い利益率を維持している。しかし、国内医薬品市場における漢方製剤の割合は2.3%と小さく、新薬などの技術革新は途絶えており、新たな成長機会が極めて限定的な業界となっている。この限定的な市場と成長機会において、いかに収益を安定化、最大化させていくかが同社の課題となっている。


副作用問題と放漫経営による経営危機を克服し高収益企業へ

#副作用問題で市場が縮小するも、普及・啓蒙活動で成長軌道に

 ツムラは日本の医療用漢方市場において圧倒的なシェアをもつ漢方メーカーです。漢方薬は中国医学をベースに日本で独自に発展した漢方医学に基づく医薬品で、西洋医学による西洋薬が人工的に合成された単一成分から成るのに対し、さまざまな有効成分を含む生薬が組み合わされているという特徴があります。1976年に漢方エキス製剤33品目が薬価(薬価基準) に収載されて公的医療保険の対象となり、その後1987年には148品目にまで拡大、それに伴い漢方製剤の市場規模も拡大しました(図-1)。

 しかし、1991年に慢性肝炎の治療用として、医療用漢方製剤で大きな売上を占めていた「小柴胡湯(しょうさいことう)」に重篤な副作用があることが報告され、さらに1996年には副作用による死亡例が発生したことで、市場が急激に縮小しました。その後、ツムラを中心に医療現場における漢方の教育や普及に取り組んだ結果、市場は1998年以降、年率2.7%で成長を続けています。


#放漫経営による経営危機からの再建

 漢方薬最大手のツムラの業績は市場動向の変化に大きく影響を受けました。一方で、三代目社長の津村昭氏がバブル期の高成長を背景に美術品や不動産などの多角経営に傾注、これらの子会社がバブル崩壊とともに赤字化、さらには支払い能力のない赤字子会社に対し架空の事業資金名目で70億円の借り入れを行ったことが発覚し、1997年に津村昭氏は不正債務保証による特別背任罪で逮捕・起訴されて有罪判決を受けました。これらの放漫経営の処理と副作用問題が重なり、90年代は経営危機の状況に陥りました(図-2)。

 1995年に創業者の孫にあたる風間八左衛門氏が四代目社長として就任し、同年に第一製薬から移籍した、後の五代目社長となる芳井順一氏とともに経営再建に着手、漢方事業へ注力し、医療現場への普及・啓蒙活動を強化しつつ、赤字子会社の損失処理を進めた結果、2001年3月期に約200億円の最終赤字を計上したのを最後に業績は回復に向かいます。

 2004年に社長を引き継いだ芳井氏は、2008年にツムラの代名詞的商品であった「バスクリン」などの家庭用品事業を売却し、新薬開発の中止を断行、医療用漢方製剤へのさらなる集中を進めた結果、現在では営業利益率20%前後を誇る高収益企業となっています。2012年には加藤照和氏が社長となり、ツムラは次なる成長を模索しています。


#家庭用品事業を分離し、医療用漢方製剤に注力

 先述したように、ツムラは「バスクリン」などの家庭用品事業も展開していましたが、医療用漢方製剤に集中するため分離しました。この事業は2008年にMBO によりツムラグループから独立し、2012年には大塚製薬傘下のアース製薬が完全子会社化しました。

 医薬品は、医師の処方箋に基づき薬剤師が調剤する医療用医薬品と、薬局などで誰でも自由に購入できる一般用医薬品(OTC医薬品)に分けられ、一般用医薬品はさらにそれぞれのリスクに応じて第1類~第3類に分類されています。医療用医薬品は医師が各患者の症状に合わせて処方するため、効果の強いものが多く、一般用医薬品は医師の処方なしで購入できるため、効果は穏やかで安全性に重点が置かれているという違いがあります。

 ツムラは医療用医薬品を中心とする方針にシフトすることで業績の回復に成功しました。[図-3/ツムラの売上高構成比]に示すように、売り上げの9割以上は医療用漢方製剤が占め、OTC医薬品やその他の医薬品はごくわずかです。

国内漢方メーカーはツムラの一強状態

#国内医薬品市場のうち漢方製剤はわずか2.3%

 日本の医薬品市場の規模は2013年の時点で7兆円弱に上りますが、そのなかで漢方製剤が占める割合は2.3%に過ぎず、1,599億円に留まっています(図-4)。漢方製剤についてさらにみると、8割以上が医療用で、一般用は2割以下です。

#医療用漢方製剤でのツムラのシェアは8割を超える

 [図-5/漢方製剤におけるツムラのシェア]は、漢方製剤の分野別シェアを表したものです。2014年度の医療用漢方製剤の市場規模は1,405億円で、うちツムラが占める割合は84.5%と独占的なシェアをもっています。一般用漢方製剤は、医療用製剤に比べるとかなり規模が小さく166億円ですが、ここでのトップは36.1%を占めるクラシエ薬品で、ロート製薬が続き、ツムラは3位です。

 国内の主要な漢方メーカーの売上高上位10社を比べると、ツムラは圧倒的な強さです。2014年度の各社の売上高は、ツムラは1,104億円で、2位のクラシエ薬品は210億円、他のメーカーは数億円から数十億円です(図-6)。国内漢方メーカーは、ツムラの一強状態にあるといえるでしょう。



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