【無料お試し読み】 BBTリアルタイム・オンライン・ケーススタディ Vol.18

good.book発行書籍の中身をお見せします。興味を持っていただけましたら書籍版もよろしくお願いします。

※書籍版は下記リンクよりご覧ください。

本書掲載のケーススタディはビジネス・ブレークスルー大学(以下BBT大学)提供のReal Time Online Case Study(略称、RTOCS)を基に収録したものです。RTOCSとは実際の企業や団体を取り上げ、「誰も正解を知らない現在進行形の経営課題」に対し、「実践」と「議論」による徹底的な論理的考察を経ることで、企業が直面している「本質的問題」を明らかにし、「経営者の視点で意思決定」を行う教育メソッドです。

『BBTリアルタイム・オンライン・ケーススタディ Vol.18』CaseStudy1より


~もしも私が俺の株式会社社長だったら~

※本解説は2015/12/20 BBT放送のRTOCS®を基に編集・収録しています

大前の考える今回のケースにおける課題とは

 「俺のイタリアン」「俺のフレンチ」「俺の割烹」など「俺のシリーズ」レストランを、国内外に展開する俺の株式会社。一流シェフの手がける高級料理を高い客回転率により低価格で提供するコンセプトがヒット、外食業界においてフード原価率30%未満が常識とされるなか、原価率60%で黒字を出すビジネスモデルは業界に革命をもたらした。2011年の第1号店出店以来、銀座を中心に店舗数を増やし業績を伸ばすが、流行り廃りの激しい外食業界において、ビジネスモデルの根幹を成す高回転率の維持と一流シェフの確保が課題となっている。


外食業界に革命をもたらしたビジネスモデル

#数々の事業を手がけた坂本孝氏による新たな事業

 一流シェフが高級料理を低価格で提供する、独自のビジネスモデルで外食業界に革命をもたらした俺の株式会社。設立者の坂本孝氏は、中古本販売「ブックオフ」の創業者として同社を全国1,000店舗以上の規模に成長させた経営者です。坂本氏は1940年に山梨県甲府市に生まれました。大学卒業後に家業の精麦会社を継ぎますが、1970年にオーディオ販売店を起業したのを始まりに、洗車事業、中古ピアノ販売、喫茶店、化粧品販売などの多くの個人事業を手がけ起業家人生を歩みます。そして、1990年に50歳で「ブックオフ」を創業、2005年に東証一部上場を果たしましたが、2007年に架空売上計上の指摘を受け引責辞任します。その後は2009年にVALUE CREATE株式会社を設立し、外食産業へ参入します。

 そして2011年9月、東京・新橋に「俺のイタリアン」1号店をオープンし、行列ができる大人気店になります。13番目の事業として、2012年に「俺の株式会社」を設立し、「俺のイタリアン」、「俺のフレンチ」、「俺の割烹」、「俺のやきとり」など、「俺のシリーズ」のレストランを国内に32店舗、海外に3店舗オープンしました(図-1)。


#独自性が大行列を生んだ「俺のイタリアン」「俺のフレンチ」のコンセプト

 ミシュランの星付き高級料理店で活躍してきた一流シェフを起用し、高級食材を使った料理を驚くような低価格で提供するというのが、「俺のイタリアン」「俺のフレンチ」のオリジナルコンセプトです。食材の原価率は60%と高く、一見、相矛盾するコンセプトに思えますが、立食スタイルで2時間制をとり、1日3回転以上の高い回転率により低価格を実現しました。

 低価格だからといって料理を少量にするのではなく、料理を堪能できるように一皿を十分なボリュームに設定しています。トリュフやフォアグラなどの高級食材が高級レストランの約1/3の価格で食べられるという独自性と競争優位性がヒットし、「俺のイタリアン」「俺のフレンチ」は大行列をつくる人気店になります(図-2)。


#フード原価率60%という外食業界の常識を覆した革命的な戦略

 食材の原価率は30%未満が常識とされている外食業界において、食材の原価率を60%に上げている「俺のシリーズ」は革命的な業態です。コスト構成比率の内訳を見ると、高級飲食店のフード原価率は30%、ドリンク原価率は30%に対し、「俺のシリーズ」のフード原価率は64%、ドリンク原価率は34%になっています。しかし、高級飲食店の客回転率が1日1回転未満なのに対し、「俺のシリーズ」は3回転以上を実現することで、固定費である人件費や家賃・諸経費の比率が大幅に下がり、高原価率でありながら利益を確保しています(図-3)。

 「俺のシリーズ」の業績とフード原価率を詳しく見てみましょう。[図-4/「俺のシリーズ」の業績と平均フード原価率]は各業態のデータをまとめたもので、平均フード原価率はいずれも50~60%台です。業態によって店舗面積(坪数)や営業時間は異なりますが、客単価は「俺のそば」を除いて、概ね3,000〜4,000円の居酒屋並み、平均月商は「俺のフレンチ・イタリアン」が6,100万円と高く、「俺のだし」を除いて概ね2,000~3,000万円です。

#「俺のシリーズ」で多業態展開、5年目にして成長鈍化

 売上高と店舗数の推移を見ると(図-5)、2011年の1号店出店以降、数年で急激に伸びていますが、2015年には成長が鈍化しています。出店当時の売上高は7.7億円でしたが、翌年は13.4億円と約1.7倍になり、さらに2013年には前年比約2.3倍の30.9億円、2014年には約2.4倍の74.2億円と大幅に成長、しかし、2015年には前年比約1.2倍の92.3億円と鈍化しています。

 店舗数についても2011年9月に「俺のイタリアン」第1号店を出店後、「俺のフレンチ」、「俺のスパニッシュ」、「俺のやきとり」、「俺の割烹」、「俺のそば」、「俺の焼肉」、「俺の揚子江」、「俺のだし」と、多角的に展開します。その数は2015年時点で35店舗となっていますが、前年と比べると国内店舗数は変わらず、海外店舗が3店舗増加したのみとなっており、出店ペースにも陰りが見えています。

「俺のシリーズ」のブランド力強化を狙ったドミナント出店戦略

#銀座で圧倒的な存在感を確立し、自社内競争を促進

 「俺のシリーズ」は銀座8丁目を中心にドミナント 出店しています(図-6)。坂本氏は、銀座という日本一舌の肥えたマーケットでドミナント展開ができれば、どこに出店しても成功できるだろうと考えているようです。一流シェフがつくる高級料理を低価格で食べられるとあれば、世間の関心は高まり、注目を集めます。「あの店は美味しかった」となれば、「じゃあ今度は、『俺の』と付く他の店舗へ行ってみよう」と、系列店舗への誘致効果が生まれます。圧倒的な存在感を確立することで、自店舗のみならず他店舗への集客効果も生むという狙いがあります。

 さらに、シェフに裁量権を与え、各店舗の一流シェフがオリジナルメニューで競い合う環境をつくることで自社内競争を促進させ、ブランド力の強化を狙いました。



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