【無料お試し読み】 大前研一ビジネスジャーナル No.11(日本の地方は世界を見よ!イタリア&世界に学ぶ地方創生)

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大前研一ビジネスジャーナル」シリーズでは、大前研一が主宰する企業経営層のみを対象とした経営勉強会「向研会」の講義内容を読みやすい書籍版として再編集しお届けしています。特別な勉強会で解説された「これからの経営」に役立つグローバルビジネスのキートピックを、豊富なデータ・事例・大前研一自身が視察して得た情報とあわせて収録しています。日本と世界のビジネスを一歩深く知り、考えるためのビジネスジャーナルです。



『大前研一ビジネスジャーナル No.11(日本の地方は世界を見よ!イタリア&世界に学ぶ地方創生)』Seminar1より


Chapter1 なぜ今「地方創生」なのか

地方創生の背景に横たわる人口減少問題

●第2次安倍内閣の目玉として掲げられた「地方創生」

 「地方創生」という言葉がメディアで頻繁に聞かれるようになったのは、ここ数年です。注目度が高まるきっかけとなったのは、2014年9月の第2次安倍改造内閣の発足でしょう。安倍晋三首相はこの内閣に、人口問題対策として「まち・ひと・しごと創生本部 」を設置しました。そして2015年には「本年は地方創生元年」と発言しています。この頃から「地方創生」という言葉が定着しはじめたのではないでしょうか。


●都心通勤圏の千葉市でも最大の問題は人口減

 なぜ今「地方創生」が、国を挙げての課題として浮上しているのか。その背景には何よりもまず、深刻な人口減少問題があります。

 図-1をご覧ください。長きにわたり増加の一途を辿ってきた日本の人口が、2010年を過ぎた頃から、いよいよ減少に転じました。昨今、「少子高齢化」が叫ばれてきましたので、若年層の人口が減少し高齢者が増加していることは、多くの人が認識しています。ところが、全人口もすでに減少が始まっているのです。図-1の右側をご覧いただくとわかるように、2010年から2015年の5年間だけで、3%以上人口が減った都道府県は10以上あります。3%未満の減少を含めると、日本のほとんどの地域で減少が起きていることがわかります。

 また、図を見る限り、都市部には減少問題はないようにも思えますが、そんなことはありません。例えば千葉県は全体としては人口が増加していますが、増えているのは千葉市の中でも幕張のようなところだけで、外側のエリアは減りつつあります。千葉市の熊谷俊人市長も「千葉市の最大の問題は人口減である」と、断言しています。そして同じく東京郊外の都市である横須賀市の吉田雄人市長も、同様の危機感を抱えています。以前は郊外から1時間20分かけて通勤していたサラリーマンも、今の世代では40分までが限界といった様子ですから、郊外地域の人口はますます減っていくというわけです。

●アイデア不在の人口対策

 人口増というのは地域繁栄の1つの象徴ですから、それを目指して各自治体は努力します。ところが実は、人口増というのは非常に難しい課題でもあります。お金をかければ必ずしも上手く行く話ではなく、アイデアを持って取り組まなければ成功しません。そこが、この課題の難しさなのです。

 日本はとかくそのアイデアに欠けており、例えば衰退する地方を何とかしようと空港を造るにしても、全国どこでも同じような幕の内弁当的な空港を造ってしまいます。それでは魅力がありません。また、アマンリゾート が三井不動産と組んで海外のリゾート地の真似事でリゾートホテルを造っていますが、ホンモノ感がなく、魅力に欠けます。いわゆる“なんちゃって”しかできないところも日本の問題です。

 世界に目を向けると、例えば米国には「地方創生」という言葉そのものがありません。何もない、人がいないところは、そのままにしておくのです。ニューハンプシャーにしても、モンタナにしてもそうです。しかし夏休みなどの休暇シーズンになれば、大都会から大挙して人がやって来ます。私のマッキンゼー時代の同僚でも、引退してモンタナに引っ越した人がいて、「アメリカンドリームはモンタナで」なんて言っていますが、本当に何もないところです。モンタナの車のプレートには“BIG SKY”と書いてありますが、確かに車で走っていると何もなくて空だけが大きく見えます。

 何もないことが魅力であるということは、世界的に見ても顕著です。ところが日本はそれを何とかしようと必死になってしまうのです。


●「地方消滅」で2040年までに896自治体が消える

 さらに、日本の地方創生の現状を考えたとき、人口減少につながるキーワードとして「地方消滅 」が挙げられます(図-2)。

 岩手県知事、総務大臣などを歴任し、学識者らとともに人口減少問題の解決に取り組む増田寛也さんは、30代の女性が少ない地域では今後人口が増えないであろう、したがってそのような地域は消滅するであろう、と推察しています。2040年までに896の自治体が消滅する可能性があるという衝撃的なレポートで話題になったことは、記憶に新しいかと思います。

 実際に、少子高齢化社会にもかかわらず、地方ではすでに高齢者の人口すら減り始めており、大都市では高齢者が激増して新たな問題が生まれています。

 また、日本の財政の悪さも見過ごせません。長期債務残高は政府見通しで2016年度末に1062兆円、地方交付税は2007年の17.5兆円から2015年には約23兆円にまで増加しています。こうした財政悪化の重荷を、今後減り続ける層の人たちで背負っていかなければならないのです。

 このような現状に直面すると、果たして安倍政権が推し進める「地方創生」は正しい道を進んでいるのか、頭を抱えてしまいます。少なくとも「上手くいっている」とは言い難いのではないでしょうか。

町おこし、ふるさと創生、リゾート法の現実

●“町おこし”でGDPの増加につながったものはない

 みなさんの中には「地方創生」と聞いて、いわゆる町おこし・村おこしのようなものを想像される方もいらっしゃるかもしれません。

 確かにこれまでに地方創生として、ご当地ブームや一村一品運動、またソーシャル・コミュニティビジネスといった取り組みは、各地で実施されてきました。ただ、一村一品運動で気持ちは高まったかもしれませんが、その地域のGDP増加につながったものは1つとしてないのではないでしょうか。

 一村一品運動で地方の人たちが元気になるということは、目的を別とすれば素晴らしいことです。ただ、産業として捉えると、例えば『カンブリア宮殿 』で取り上げられるような一村一品運動はほんの2億円程度の規模です。Chapter3およびSeminar2で詳しく紹介しますが、町の人たちが産業を興し、世界を相手にビジネスをしているイタリアの例で言えば、1つの産業で1,000億円以上規模のものがいくつもあります。そうした産業は将来性もあり、若い後継者も難なく育っていきます。

 そのように世界に目を向けると、日本の一村一品運動やソーシャル・コミュニティビジネスは、街づくりや地域のイメージアップ、それなりの収益性は見込めるにしても、効果は限定的で、地域経済全体の活性化としてはインパクトが弱すぎます(図-3)。

●音楽ホールにテーマパーク 地方創生の残骸が各地に

 町おこし以外にも地方創生の取り組みは、国内でこれまでさまざま行われてきました(図−4)。

 国家主導のプロジェクトとしては「ふるさと創生 」や「リゾート法 」が挙げられますが、結果として、必要のない音楽ホール、集客できないテーマパーク、自然環境を破壊するリゾート開発、赤字の第三セクターなど、プロジェクトの残骸のようなものが全国各地に残っているのみです。

 また、有名知事による改革で地方創生を図ったこともありました。宮城県知事の浅野史郎 氏、高知県知事の橋本大二郎 氏などが主な例です。橋本氏は個人的にもいい友人ですのであまり言いたくはありませんが、彼らが知事を務めている期間、GDPは下がり続けました。有名無実で実体がまったくない。つまり、有名な知事と言っても、自身が知事になることで本当にGDPを伸ばした、実績を上げたと言い切れるような人は、ほとんどいないのではないでしょうか。

 また、前出の千葉市長や横須賀市長といった若手が首都圏近郊の自治体の首長として地域を牽引しようと取り組んでいますが、首都近郊都市といえども人口減少に頭を抱えているのが現実です。



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