【無料お試し読み】 エバンジェリストに学ぶ成長企業のためのワークスタイル変革教本Vol.1

good.book発行書籍の中身をお見せします。興味を持っていただけましたら書籍版もよろしくお願いします。

※書籍版は下記リンクよりご覧ください。

2016/2/19発売予定! エバンジェリストが語る、これからの働き方

働き方変革が、企業の成長エンジンを変える!

エバンジェリストが語る、これからの働き方。

本書では、革新を実現する先進IT企業の"エバンジェリスト"が「企業を成長させるワークスタイル変革」について語りつくします。

今、働き方をどう捉えることが、日本企業を成長させるのか?

現場で提案を重ねてきたからこそ語れる、絵空事ではない「企業と社員の"働く"」とは。

企業の課題解決に直結するベストプラクティスを解説。

経営層の方はもちろん、会社を成長させたい現場の皆さんにこそお読みいただきたい教本です。


『エバンジェリストに学ぶ成長企業のためのワークスタイル変革教本Vol.1』第一章より


1 なぜワークスタイルを変える必要があるのか?

サイボウズについて

 私どもサイボウズは、国内シェア第一位のグループウェア製品をクラウドやパッケージでお客様にご提供する会社です。目標は「あらゆる会社のチームワークを広げる」こと。グループウェアの開発・販売はその手段です。

 チームワークを広げるためには、グループウェアをできるだけたくさんの人に使っていただきたい。ですから、売上や利益よりも多くの方に利用していただくことが重要だと考えています。

 多くの利用者が使うということは、使用環境も多岐に渡るということです。例えばWindows、Mac、スマートフォン、フィーチャーフォン(ガラケー)。どんなデバイスであろうとも、その環境に左右されることなく使えるシステムがサイボウズ製品です。

 そのためには、できるだけシンプルにしなくてはいけません。世の中には、例えばある特定のソフトがインストールされていなければ動かないシステムがたくさんあります。それがそのベンダーさんの方針ならばいいでしょう。しかしサイボウズは、それを〝障害〟と考えています。我々は「誰でも何もせずに使える」「どんなデバイス、環境でも使える」ということを重要視して、製品作りを行っています。

 会社の創業は1997年。私が入社したのは2000年8月です。ちょうど東証マザーズに上場する2週間ほど前のことでした。

 当時の社員はわずか28人程度。そのうち現在まで残っているのは役員を除けば私を含めて3人くらいしかいません。そういう時代を経て、おかげさまで東証一部に上場し、今や東京のど真ん中、日本橋駅の上にオフィスを構えています。社外の方から見ると大変な躍進をしてきた企業のように見えるでしょう。しかし我々としては、まだまだここからが勝負だと思っています。


大反響があった、1本の動画

 我々は2014年12月に1本の動画を公開しました。これはワーキングマザーを応援する内容で、ITの話は全く出てきません。その動画が公開されるやいなや、瞬く間に30代女性を中心とした視聴者の間に、共感の嵐が巻き起こりました。私は当初、正直そこまでの反響はないだろうと思っていました。それが私の、そして世の中の一般男性の至らなさを露呈しています(笑)。

 この動画は、知らない間に誰かが台湾のサイトに翻訳字幕をつけて載せたらしく、そこでは175万ページビューを超えました。台湾でも働く女性の悩みは同じなのだなと思い至った次第です。

 現在、共働き家庭の数は共働きをしていない家庭の倍だと言われています。とすると「共働きが当たり前」という認識で人事制度や勤務制度を設計していかなければいけません。にもかかわらず、現行の制度は共働きをあまり視野に入れていません。制度が実際の家庭環境に追いついていないという現実を、この動画の反響により実感しました。


働き方の意義の変化

 サイボウズのワークスタイルのテーマは、一言で言えば「自立」です。社員自身が自立し、自分で自分の働き方を決めることができる。それを根底にしたワークスタイルの刷新を続けています。ではなぜ今、ワークスタイルを変えなければいけないのでしょうか。それは国際社会での日本の位置と、日本の人口構成が変化してきているからです。

 一昔前、日本の労働生産性がとても高い時代がありました。しかし2014年時点における日本の労働生産性は、OECD加盟国34カ国中21位。かなり低いです。皆さんも日本の労働生産性がこんなに低いことに驚くのではないでしょうか。米国より低いのはまだ分かるとしても、イタリアやスペインよりも労働生産性が低いとは驚きです。この統計には、日本の残業時間が長いことも影響しています。しかし、おそらく、好き好んで無駄に残業をしている人はあまりいないはずです。

 もう一つ特徴的な統計を見ていただきましょう。図の一番下のグラフを見ていただくと、日本の自殺死亡率は先進国の中でもかなり高い。特に40〜50代男性、俗にいう働き盛りの自殺率が非常に高いのです。この世代の人が自殺する理由は、仕事がらみ以外ではそれほどないと思います。

 皆さんにとって〝働く目的〟とは何でしょうか。それは「幸せになりたいから」ではないでしょうか。みんな幸せになりたくて働いているにもかかわらず、こういった数字に結び付いてしまっている。それほどまでに男性は働いていて、そして働くことが辛くなってきている。

 しかし先ほどお話しした動画でも描かれているように、働く女性もまた辛いのです。そう考えると、今の日本の労働環境においては、誰も得をしている人がいないことになってしまいます。

 なぜ日本の社会はこんなことになってしまったのでしょうか。それを紐解いていくと、そこに勤務制度のひずみが見えてきます。


「自殺率の高さ」の原因を紐解く

 例えば女性と男性が新卒で同時入社するとします。今や女性が働くのは当たり前のことですから、女性もバリバリ働きます。しかし出産を迎えると多くの女性が退職してしまっていました。その後、子どもが学校に通うようになると、女性の多くは家計のために再度働くことを希望しますが、そのほとんどはパートタイマーになります。

 一方男性は、バリバリ働き続けてはいるものの、やがてリストラや子会社への出向などが現実味を帯びてきます。そして40歳を超える頃には人生の転機が訪れます。ところが、転機を迎えて職場が変わっても、前より給料が高くなる人はほとんどいません。転職にしても出向にしても、ほとんどは今までよりも給料が下がることになります。

 そのうちに生活面では親の介護が必要になってきます。すると、多くの場合は女性が介護をすることになりまた働けなくなります。こうして子どもにも親にもお金がかかるようになり、そうこうしているうちに、男性は疲弊して「もうこれ以上働けません」という状況に追い込まれる。日本における自殺の構造は、こういう形になっているのではないでしょうか。


「産業構造の変化」に合わせたワークスタイルを

 ワークスタイルの変革を考える上で、産業構造の変化も重要な要素です。

 日本が高度成長期になぜあれだけ成長できたかというと、他の国と比較して日本の人件費が安かったという実態があります。今でいう中国やベトナムと同じような状況だったわけです。そういう状況では、他の国で作られた製品を少し安い価格で大量に製造販売すると競争に勝てるというおなじみの経済モデルが、当時の日本では成立していたのです。

 こういう社会における社員教育では「同じスキルと同じ行動特性を持った人間を大量に育成すること」が大事です。全員新卒で一括採用をして、同じ教育を施すのです。そして同一線上に並べ、同じ目標に向かって「よーいドン!」で競争させる。当時はこうして教育された人材が会社にとっても都合がよかったのです。

 ところが、現在は日本の産業構造も変化し、高齢化により会社でも20代より50代のほうが多くなってきていますので、このような教育論はもう通用しません。報酬となるポストが無いですから。にもかかわらず、働き方も、また働く価値観もはあまり変わっていない。そのため、いろいろなところで非効率なひずみが発生してしまっているのです。


2 現代に求められる「働き方の多様化」

女性も男性も、休んだり働いたりできる勤務制度

 先ほど、サイボウズのワークスタイルのテーマは「自立」と申し上げました。実はもう一つあります。それは「多様性」です。ワークスタイルにおける多様性とは何かというと、簡単に言えば、男性も女性も関係なく、勤務時間や勤務場所を自分で決めることができる会社になることです。そのために我々は「選択制勤務制度」の仕組みを作りました。

 女性が出産で休んだら夫である男性はバリバリ働き、女性がまたキャリアを継続したいと思った時にはちゃんと前と同等の給料で働けるように、きちんとその職務を準備してあげるというシステムです。もちろん男性も育児などで休みたい時に休めるようにして、その後、また働きたくなったらバリバリ働いて、今度は妻が休む……というふうに夫婦でバランスを取りながら、世帯平均収入をだんだん上げていけるような働き方ができればお互いに幸せなのではないでしょうか。我々は、皆がそういう働き方を実現するために、どうしたらいいのかということを徹底的に考えました。


早く辞められる社員になってほしい?

 かつてサイボウズの入社式で副社長は新入社員に「皆さんには、早くサイボウズを辞められるようになってほしいと思います」と言っていました。せっかく頑張って入ってきた新入社員に向かって「早く辞めろ」とは、一体どんなブラック企業なのかと思われるかもしれません(笑)。しかしこの言葉の真の意味は、「いつ辞めても自分の力で食べられるようになってほしい」ということなのです。

 ここで、先ほど申し上げた「日本の自殺率の高さ」についてもう一度考えてみましょう。この自殺原因のほとんどは、40代、50代になった時「これ以上、給料分の価値を生み出せない」という葛藤にあります。この年齢の人たちは転職を〝しない〟のではなく〝できない〟のです。なぜなら転職をすると給料が下がることが分かっているからです。給料を下げたくなければ現在いる会社にしがみつくしかない。すると会社の言う通りに働かざるを得なくなり、ストレスが溜まっていくのです。こういう状況は会社にとっても社員にとってもいいはずがありません。転職をしても今までと同じくらい、もしくは今まで以上の給料がもらえるならば誰もストレスは溜まらないし、会社の生産性が落ちることもないのです。「いつ会社を辞めても食べていける人」を育成したいというのは、そうした考えに基づいています。


「自立」と「多様性」

 そこで「いつ辞めても食べていける人」の育成のために我々が掲げたのが「自立と多様性」です。「自立」とは「会社に寄りかからないこと」。一方の「多様性」とは、「スキルと働き方の多様性」です。

 例えば「残業一斉禁止」や「ノー残業デー」という制度をよく聞きます。しかし、特定の曜日に全員が帰ることにしたら、逆に他の曜日に早く帰ることができなくなって、子どものお迎えにも行けなくなってしまいます。そうなると、一家団欒どころか夫婦喧嘩の原因にすらなってしまいます。「皆で同じように働くこと」が仕事の効率をよくするわけでは決してないのです。

 また、人生は山あり谷あり、いろいろなことがありますから、人によってバリバリ働きたい時期とペースを落としたり、スキルの再開発のための時期があり、そのタイミングや期間も人によって異なります。たくさん働くか短時間で働くかは個々の状況によって選べるべきです。ですから、その人の生活の状況に合わせて1日5時間しか働かない、といった選択もあっていいのです。1日5時間だけ働くことを選んだからといって、その人が10時間働く人よりも格下だということは絶対にありません。ベンチャー企業などでよく、高い理想を掲げる人が素晴らしいという価値観があります。「なんでそんな理想の低いことを言うんだ」「もっと高いところを目指してジャンプしようよ!」などと言う。ところが、子どもを育てながら働いている人にとっては「いや、子どもを高くジャンプさせるのに必死ですから」と言いたくなる。それはその通りなのです。じゃあそういう人が格下かというと、決してそんなことはないわけです。

「長時間働く人ほどスキルが高いと言うことはない。職位が上だからといって偉いということはない」。この価値観の変革を行うことができる企業がこれからのワークスタイルに変わって行けるのです。


「100人いれば100通りの人事制度」への道

 サイボウズも、ここに至るまでにはさまざまな葛藤がありました。最高離職率が28%だった時代もあります。28%というと1年に4分の1以上の社員が退職することになりますから、4年経ったら社員総入れ替えです。転職率の高いIT業界の中でもとりわけ高い数字だったのではないかと思います。

 当時は「君は優秀だから、あと給料これだけ上げてあげるから会社にいて」とか「今の仕事辛い? 上司変えてほしい? じゃあ別の部署でどう?」といった引き止め策も行いましたが、こうした方法はあまり効果がありませんでした。

 そこで考えたのが「我々が本当にほしい人材は、給料が目的で来る人なのか?」ということです。答えとしては、そうじゃないと。我々が求めているのは「自分で働く意欲を持って、自分の人生は自分で作りたい」と考えている人であり、そういう人たちが入社してくれて「適正な給料で働く」と言ってくれたならそれでいいのではないか、という結論に至りました。

 これが現在のサイボウズの人事制度のポリシー「100人いれば100通りの人事制度」、つまり「あなたの好きな人事制度を自分で選択してください」というシステムの根幹となっています。


「公平感」と「公平性」

 人間は一人ひとりが独創的なのですから、一人の個性を極力伸ばし、その人ならではの得意技を組み合わせることで業績を上げてゆくチームワークができないか考えました。。「あなたの好きな人事制度を自分で選択してください」ということは、逆に言えば「自分の働き方は自分で作ってください」ということです。その代わりといってはなんですが、そこに「公平感」はないかもしれません。なぜなら、人それぞれ「自分の〝公平〟の尺度」が違うからです。

 バリバリ働くのが幸せという人、のんびり働くのが幸せという人、給料はたくさんもらうのが幸せという人もいれば、自分の好きな時間に働くのが幸せという人もいる。そこに会社の定規を当てることはあまり意味はありません。

 サイボウズが〝公平〟であるべきと考えているのは「全員が自分に合った制度を選ぶ権利がある」ことです。これはどんな立場の人であっても変わりません。例えば社員が「私は裁量労働制にしてほしいです」と言っても許可されますし、「私は時間管理にしてほしいです」と言っても許可されます。このような自分に合った働き方を社員全員ができるようになれば、それぞれの社員がその時の状況に合わせて働けて、紋切り型ではない自立した社員の育成にもつながるのではないかと考えています。


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