【無料お試し読み】 もしも、あなたが「最高責任者」ならばどうするか?Vol.1

good.book発行書籍の中身をお見せします。興味を持っていただけましたら書籍版もよろしくお願いします。

※書籍版は下記リンクよりご覧ください。

BBTリアルタイム・オンライン・ケーススタディ書籍シリーズ総集編

※本書はビジネス・ブレークスルー大学出版「BBTリアルタイム・オンライン・ケーススタディ(Vol.1~4)」をまとめて収録したシリーズ総集編です。

「正解のない今の課題」をケースとして、自分自身が「経営者、リーダーであったらどうするか」を考察する。

BBT大学の実践型経営トレーニング書籍化シリーズ、総集編がついに登場。

●本シリーズでは、経営コンサルタント大前研一氏が学長として率いるビジネス・ブレークスルー大学提供のケーススタディプログラムを書籍化。毎号、大前氏およびBBT大学総合研究所によるケーススタディ解説を収録します。


「もしも、あなたが「最高責任者」ならばどうするか?Vol.1」CaseStudy1より


~もしも私がThe Coca-Cola Company CEOだったら~

※本解説は2015/3/8 BBT放送のRTOCS®を基に編集・収録しています。


大前の考える今回のケースにおける課題とは

 業界における圧倒的なトップメーカーであるCoca-Colaは、先進国市場を中心とした「脱炭酸」を背景に2014年12月期は二期連続の減収減益となった。世界清涼飲料市場における炭酸飲料のニーズが3割であるのに対し、同社の製品ポートフォリオは7割が炭酸飲料であり、市場ニーズとの乖離が大きい。今後更に脱炭酸が進むと予測されるなか、「製品ポートフォリオの最適化」、ひいては「ビジネスモデルの再構築」が同社の課題となっている。


加速する炭酸離れ、飛躍するミネラルウォーター

#健康志向、ソーダ税…米国の炭酸飲料に吹く逆風

 昨今、米国では健康志向の高まりによる「炭酸離れ」が顕著です。どれほど炭酸離れが進んでいるかですが、今年(2015年)3月5日の朝日新聞では、米国で「コカ・コーラ」をはじめとする炭酸飲料の販売量が9年連続で減少しているという記事が組まれました。肥満対策の一環として炭酸飲料に課税する「ソーダ税 」も広がりつつあり、飲料各社が炭酸からの脱却を図らざるを得ない状況です。

 米国での炭酸離れを裏付けるデータがあります。図−1は米国の清涼飲料の市場推移ですが、まずミネラルウォーターの販売が伸びていることがはっきりとわかります。「ゲータレード」などのスポーツ飲料も微増ながら伸長している。一方、果汁飲料の販売は徐々に減少傾向にあり、目に見えて大きく減少しているのが炭酸飲料です。


#先進国市場においては炭酸飲料や果汁飲料が低迷

 ミネラルウォーターの躍進は、米国に限ったことではありません。図−2では、先進国・地域の清涼飲料の市場推移を示していますが、北米市場では炭酸飲料や果汁飲料といった、甘味系飲料が苦戦している一方、ミネラルウォーターが急増し、双方がほぼ同じレベルまできています。また西欧市場でも炭酸・果汁飲料が低迷しているなか、圧倒的に強いのがミネラルウォーターです。そのミネラルウォーターにしても、炭酸入りではないものが主流となっています。

 では日本市場の状況はどうかというと、確かにミネラルウォーターは伸びていますが、他の先進国市場との明確な違いは茶系飲料の消費量が最も大きく、更にはボトル入りコーヒーも大きなシェアを持っている点です。図−2では便宜上「その他」としてまとめていますが、茶系及びコーヒー飲料が大きなシェアを持つのが日本市場の特徴です。


#ミネラルウォーターの躍進は新興国市場でも

 新興国・地域ではどうでしょうか。図−3を見ると、こちらでもミネラルウォーターが急増しているのがわかります。アジア・太平洋地域ではミネラルウォーターが群を抜いて上昇中です。中南米市場では、炭酸飲料市場が最大で成長も続けていますが、ミネラルウォーターの成長速度が炭酸飲料を上回っています。そして中東・アフリカ市場でも、ミネラルウォーターが大幅に伸びています。これらを加味し、図−4の世界の清涼飲料市場推移を見て言えることは、世界的にミネラルウォーターが非常に伸びているということです。トータルで均せば炭酸飲料や果汁飲料も伸びてはいますが、微増という程度に留まります。


Coca-Colaが二期連続で減収減益に

#清涼飲料界の王者

 世界の清涼飲料市場が時代のニーズとともに大きく変化するなかにおいても、Coca-Colaが圧倒的な世界トップの清涼飲料メーカーであることに変わりはありません。

 図−5は世界の清涼飲料メーカーの出荷量ですが、Coca-Colaは1,138億リットルで独走状態。2位のPepsiCoに倍以上の差をつけています。

 しかしながら、図−6のCoca-Colaの業績推移を見ると、ここ直近で二期連続の減収減益となっていることがわかります。売上高は400億ドル以上、つまり4兆円以上あり、営業利益としても1兆円超とまだ余裕はありますが、成長に陰りが見えています。この売上高を内訳で見ると(図−7)、半分以上は海外市場におけるものです。また、2010年には北米の系列ボトラー「コカ・コーラ・エンタープライズ」を連結子会社化したことで見掛けの売上高は大きく伸びています。


#市場ニーズと大きく乖離したCoca-Coleの製品ポートフォリオ

 なぜ、そこまで圧倒的な強さを得たCoca-Colaが、ここに来て減収減益を続けているのか。

 図−8でCoca-Colaの製品ポートフォリオを見てみましょう。製品の71%を占めるのが炭酸飲料。いかに炭酸偏重であるかがわかると同時に、ミネラルウォーターに弱いことも見てとれます。Coca-Cola以下は、各地域の清涼飲料市場の需要構成を表していますが、これらと並べるとCoca-Colaの製品ポートフォリオと各地域の清涼飲料の需要構成との乖離は一目瞭然。「世界の王たる者、聞く耳持たず」では済まない状況になった訳です。

 また、図−9のCoca-Colaの製品ポートフォリオを地域別に見ても、日本コカ・コーラを除くいずれの地域でも、炭酸偏重であることがわかります。その理由のひとつにCoca-Colaのビジネスモデルとして「原液ビジネス 」というものがあり、Coca-Colaは各地域に原液を供給することで利益を生む仕掛けになっているので、「コーラを売ること」に拘るのは自明の理だったのです。


#ビジネスモデルの再構築が喫緊の課題

 以上のことから、図-10に示すCoca-Colaの現状と課題が見えてきます。

 先進国市場は完全に脱炭酸・脱甘味へと向かい、急速なミネラルウォーターシフトが起こっている。新興国市場では炭酸・甘味系の成長をミネラルウォーターが上回る勢い。即ちCoca-Colaの製品ポートフォリオと市場ニーズとの乖離が今後ますます拡大していくということです。

 従ってCoca-Colaは、製品ポートフォリオを市場に合わせて最適化すべく、脱炭酸=脱原液ビジネスを見直し、ビジネスモデルを再構築する必要があるということが言えるのです。


独自の製品ポートフォリオを貫く日本コカ・コーラ

#「1本でも多くコーラを」に屈せず誕生したヒット商品

 さて、この課題を乗り越えるために思い出してほしいのが、日本コカ・コーラです。先ほどの図-9では、日本コカ・コーラだけは独自の製品ポートフォリオを持っていました。Coca-Cola全体では71%を占める炭酸飲料が、日本では26%にすぎません。果汁飲料もたったの5%で、ミネラルウォーターは13%。その他が57%も占めている。このその他が何を指すかというと、「爽健美茶」や「アクエリアス」、そして缶コーヒーの「ジョージア」です。

 先述した日本以外の清涼飲料市場と比較すると、日本コカ・コーラの製品ポートフォリオは日本の需要構成とほぼ一致しています。

 これらその他の商品は当初アトランタのCoca-Cola本社に受け入れられず、「コーラを1本でも多く売れ」とお叱りを受けたようです。日本コカ・コーラとしては、「UCCに対抗するためのジョージア」、「大塚のポカリスエットに対するアクエリアス」、「伊藤園に対する爽健美茶」と、競合を見据えての商品戦略でしたが、Coca-Cola本社としては缶コーヒーなど到底認められない。そこで苦肉の策として、Coca-Cola本社のあるジョージア州アトランタに因んだブランド名をコーヒーに名付けることで 、本社を納得させたという話もあります。


#日本コカ・コーラのノウハウに地域別戦略を学ぶ

 Coca-Colaの製品ポートフォリオの最適化においては、この日本コカ・コーラに学ぶことがあります。

 図−11は日本の清涼飲料市場の製品構成の変遷です。経済成長期には炭酸飲料や果汁飲料などの甘味系飲料が大きく成長しています。それが成熟期へと移行するにつれ茶系飲料やミネラルウォーターなどの「無糖飲料」の割合が大きくなり、コーヒー飲料もブラック(無糖)タイプが増えてきたことがわかります。

 つまり、経済成長の只中にあり、今後も炭酸需要の伸びが見込める新興国市場は当面、炭酸・甘味系中心の従来モデルのマーケティングでよいでしょう。しかし先進国市場については脱炭酸・脱甘味への急激な変化に備えて、成功モデルである日本コカ・コーラのノウハウを研究する必要があるということです。日本にならったマネジメントチームを米国や西欧市場に導入するのもひとつの手です。


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