【無料お試し読み】 法務デューデリジェンス チェックリスト

good.book発行書籍の中身をお見せします。興味を持っていただけましたら書籍版もよろしくお願いします。

※書籍版は下記リンクよりご覧ください。

リスクをとり新ビジネスに挑戦するベンチャー企業にとって、リスク管理は生命線です。しかし、費用等のために法律問題の調査は後回しになりがちで、時に思わぬ落とし穴にはまり、場合によっては手遅れとなることさえあります。

 

そこで、法務デューデリジェンス(以下法務DD)を効率的に実施できるよう、長年ベンチャー企業と投資家をつないできた第一線の弁護士が、法務DDのための資料リストとチェックポイントを標準化しました。無用の紛争や法律問題の芽を早期に摘み、経営資源を成長戦略に集中させ、企業価値のさらなる向上を図るためのソリューションを提供いたします。ベンチャーキャピタルへの投資家にとっては投資先の調査に役立つ「法務DDマニュアル」として、またベンチャー企業にとっては上場準備に入る際の法定監査に向けた「自己検査マニュアル」として、双方にとって有益な手引きとなり得る決定版の一冊です。

 

日本最大の弁護士事務所の1つである西村あさひ法律事務所に在籍の著者が、実際に実務で長年使用してきたチェックリストをもとに再構成した本書。“備えあれば患いなし”の座右の書として、IPOやM&Aなどの実務に携わる多くの方々にリファレンスモデルとして利用され、法務DDの効率化と標準化のお役に立つことを願ってやみません。



『法務デューデリジェンス チェックリスト』1 はじめにより


1.1 デューデリジェンスの意義

 「デューデリジェンス」(Due Diligence)とは、直訳すれば、「相当な注意」、つまり「通常程度に慎重な人が当該状況において払うであろう程度の注意」を意味します※1。この用語は、米国の1933年証券法(Securities Act of 1933)における、いわゆる「デューデリジェンスの抗弁」に由来すると説明されています※2。

 証券の公募の際にSEC(Securities and Exchange Commission)に提出が義務づけられている登録届出書(Registration Statement)に重要な事実についての不実記載や記載漏れがある場合、当該証券を取得した者は、当該不実記載や記載漏れを知っていた場合を除き、当該証券の発行者やその発行に関与した者を訴えることができます(同法11条)。この場合、被告のうち発行者自身は、無過失責任を負いますが、その他の者(発行者の役員、登録届出書の一部を作成したりこれに証明を与えた会計士等の専門家※3、引受人(証券会社)など)は、所定の注意義務を尽くしたことを立証すれば、責任を免れることができます。これがいわゆる「デューデリジェンスの抗弁」です。

 現在では、デューデリジェンスとは、会社や事業、財産などの取得を検討する投資家などが投資判断を行うために、これらに対して実施する調査を指すことが多いです。実務では、「デューデリ」又は「DD」と略称されます。デューデリジェンスの対象となるのは、対象会社(以下単に「会社」ともいう)の法務、財務、税務、ビジネス、環境、人事、情報システムなどがありますが、近年では、売り手側が取引に先立って、事業や資産などの売却対象に潜在する問題点を把握するために自ら調査を行う例も増えており、「Seller's DD」とも呼ばれています※4。

※1:田中英夫編『英米法辞典』(東京大学出版会、1991)281頁参照。

※2:マイケル・J・コーバー「企業買収におけるデュー・デリジェンスの役割」商事法務1260号(1991)24頁、濱田邦夫「企業買収とデュー・ディリジェンス」清水湛・稲葉威雄他編『商法と商業登記』(商事法務研究会、1998)509頁参照。

※3:弁護士は、米国証券法11条の責任を負うものとして明記はされていないが、登録届出書に意見書を載せた場合には、会計士等と同様に専門家として責任を負う。

※4:本書が想定している「自己検査(セルフチェック)」も、このSeller's DDの一種といえる。


1.2 法務DDの主な目的

 法務DDを行う目的は、当事者が計画する取引の種類によっても異なりますが、会社や事業の取得を行う典型的なM&Aのケースを前提とした場合、その主な目的は、次のとおりです。

(法務DDの主な目的)

① 「強み」の検証

② 取引の実行に障害となりうる問題点の発見

③ 企業価値に悪影響を及ぼしうる問題点の発見


1.2.1 「強み」の検証

 会社や事業の取得を計画する買い手側には、必ずその取引の「狙い」があります。例えば、売上げ規模の拡大による業界ランキングの向上、顧客や取引基盤の獲得、新分野への進出などです。その際、買い手側が当該会社や事業に目をつけた理由は、その商品やサービスのブランド力、研究開発陣が有する技術力、営業部門が有する販売網など何らかの「強み」に魅力を感じたためであることが通常です。

 しかし、こうした「強み」を支える基盤がどの程度強固なものかは、外部からは分からないことが多く、時にその「強み」が虚像に過ぎない場合さえもあります。

 そこで、こうした取引を行うに際しては、買い手側が魅力を感じた「強み」が法律的観点から見てどの程度保護されているかについて調査を行い、取引をそのまま進めて良いか否かを検証する必要があります。


1.2.2 取引の実行に障害となりうる問題点の発見

 取引を進めること自体には特に問題はない場合でも、当初の予定どおりに取引が実行できるとは限りません。例えば、関係当事者からの承諾を得る必要が生じて、スケジュールの大幅な変更を余儀なくされたり、取引の実行に障害となる問題を回避するために取引ストラクチャーを変更したり、時には取引自体が中止となるケースも少なくありません。そのため、次のような取引の実行に障害となりうる問題点がないかの調査を行う必要があります。

① 権利の帰属に対する疑義

 典型例としては、株式譲渡が想定されているにもかかわらず、過去における株式の譲渡契約において株券の交付※5が行われていなかった場合などが挙げられます。

② 包括的承継に対する障害事由

 事業譲渡の場合は、個別承継であるために対象事業の個々の資産や契約関係などについて個別に移転手続を行う必要があります。そのため、契約の相手方から個別の承諾を得るなどの移転手続を省略したい場合、株式譲渡以外には、会社分割、合併などの包括的承継のストラクチャーが採用されるのが通例です。

 しかし、この包括的承継の場合、契約書にチェンジ・オブ・コントロール(Change of Control)条項※6や契約上の地位承継の制限条項※7などがある場合には、対象資産や契約などの承継ができない場合もあるので、注意が必要となります。

③ 偶発債務

 違約金の支払義務や買戻し義務などの特別な契約条項、訴訟その他の紛争問題などがある場合、将来、対象会社に多額の債務が発生する可能性があります。こうした潜在的な債務(偶発債務)のおそれが判明した場合には、当該リスクを遮断できるように、合併などの包括的承継のストラクチャーは避けて、対象会社を別法人のままにしたり、事業譲渡のストラクチャーを採用するなどの措置が必要となる場合もあります。



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