【無料お試し読み】大前研一ビジネスジャーナル No.12(21世紀の人材戦略)

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「大前研一ビジネスジャーナル」シリーズでは、大前研一が主宰する企業経営層のみを対象とした経営勉強会「向研会」の講義内容を読みやすい書籍版として再編集しお届けしています。特別な勉強会で解説された「これからの経営」に役立つグローバルビジネスのキートピックを、豊富なデータ・事例・大前研一自身が視察して得た情報とあわせて収録しています。日本と世界のビジネスを一歩深く知り、考えるためのビジネスジャーナルです


『大前研一ビジネスジャーナル No.12(21世紀の人材戦略)』Seminar1 21世紀の人材戦略より


Chapter1 ボーダレス経済の要諦「世界最適化」に対応すること

人材を自前で揃える必要のない時代に人をどう採りどう育てるか

●スマホで引き起こされる破壊的イノベーション

 現在、日本の多くの企業は、人材戦略に関して、さすがに20世紀型のものを見直すようになってきています。21世紀の人材戦略は従来のものから抜本的に変えるべきだ、という考え方です。その背景としては、国内市場が縮小しているというのもありますし、スマホなどのテクノロジーを使った破壊的イノベーションが起こりやすい環境が整ってきたというのもあります。

 例えば、日本では国土交通省の指導によって頓挫してしまった配車サービスのUber。これはスマホベースで始まったサービスです。私があらためて驚くのは、スマホというのは全世界で統一されたシステムだということです。スマホに搭載されるOSはアップルのiOSとグーグルのAndroidがシェアを二分していますが、アプリはほとんど両OSで共通に開発されており、システムとしては実質1種類と言ってもよい。こういうシステムの上でサービスを展開することで、1つの地域で事業がうまくいくと、世界中のほかの地域でも容易に展開することができるのです。

 例えば、サンフランシスコでうまくいったら、そのシステムを用いて次の年にニューヨークでやって、その次はヨハネスブルクでやってという具合に、世界中500都市以上に進出することができます。我々の世代のグローバリゼーションというのは、日本でうまくいくとAという国にいって、そこでうまくいくとBにいくという国別の組織展開でしたが、今や、スマホを中心とするこれらのエコシステム(生態系)を使うと一瞬にして大都市だけを500も攻めることができるのです。こういった方法であれば、一気に時価総額5兆円の会社が5年で生まれてしまう。こんな破壊的イノベーションが起きているのが21世紀なのだという事実を認識しなければなりません。


●21世紀に全く対応していない日本の学校と人事制度

 さて、20世紀型の人材戦略から変わってきているとはいえ、日本の人事制度を調べてみると、やはり昭和30年代の集団就職のやり方がまだ非常に根強く残っています。高度経済成長期には製造業で大量の労働力が必要とされたために一括採用型の人材確保が必要だったわけですが、あの頃とはもう時代が違います。だいたい4月に一括採用なんてしている国は、日本以外にありません。

 一括採用ということは、個々人を見ないでどこの学校を卒業したかを見るといった採用基準になります。また、学校で成績の上の方を採るというのはクレディビリティ(credibility: 信頼性)としては一定の成果があるとは言えますが、今や学校そのものがもう21世紀に対応していないのです。学校のシステムを改変するには時間がかかりますから、そういうところから人材をごそっと採った会社は向こう20年から30年変われないということになり、悲劇としか言いようがありません。私は日本の人事制度はやはり、ここで大きく見直す必要があると思っています。


●人材を内部に固定化せずアウトソーシングするメリット

 1989年に発表した拙著『ボーダレス・ワールド』(プレジデント社)で私は“世界最適化”というモデルを解説しました。原材料を一番安いところで調達して、人の質が一番よくて安いところで加工して、一番高いマーケットで売る。これがボーダレスワールドにおける収益最適化のやり方ですよということを書いたのですが、そういう意味で労働力としての人間をある国で固定的に持つということは、やはり非常にリスクが高いことになります。

 だから、安倍首相には申し訳ないけれども、今の時代に「正規社員を増やそう」「非正規雇用をなくそう」などと言っているのは、世界最適化の流れについていかないということを明言しているも同然です。非常にリスクの高いことを日本は今やろうとしています。そのことを考える必要がある。

 それに合わせてもう1つ言えることは、人材は全部自前でなおかつフルタイムの雇用で揃えるのではなく、今やいろいろな外的リソースが使えるのだということです。ビジネスプロセスアウトソーシング(BPO)や、クラウドソーシングといった方法がいろいろあるので、その辺を使いまくる。また、そういうサービスを使える人材を社内に置いておくということが非常に重要です。

 また、これはあとで詳しく説明しますが、21世紀に求められる人材とはどんなタイプかというと、基本的には「グローバルな活躍のできる人材」「イノベーター」「リーダー」が必要になります。しかし、一括採用のシステムでは、なかなかこういう人が育ちません。


●何もできない「総合職」より本当に信用できる1人を

 日本の企業のワークフローを見ていると、だいたいSOP(Standard Operating Procedure: 標準作業手続き)というものがありません。仕事が定義されてないので、それにフィットする人間をつくっていくことができない。これがすべての誤りの始まりで、人材戦略上でも大きな間違いを引き起こしているわけです。

 きわめて“日本的”な職種として「総合職」というものがあります。4月に一括採用された人のうち、将来的には比較的管理職に近い立場になることを期待されて採られている人たちのことですが、この「総合職」は英語に直すことができません。欧米の企業の雇用体系の中にはない職種だからです。あえて英語に直すと「オールマイティ・パーソネル」とでもいうことになりますが、そんな人がいるわけがありません。Aもできる、Bもできる、Cもできる――みんなそのつもりで入ってきていますが、そのくせなんにもできない、というのが実際の平均値です。こういう言葉があること自体が非常に旧態依然としている。

 最近つくづく思うことは、自分の他にあと1人本当に信用できる人物がいたら、会社はなんとかなるのだということです。松下幸之助さんにも高橋荒太郎さんがいました。あとはその他大勢、みたいな感じでもなんとかなるのです。だから、経営者は自分で本当にこの人だと思った人を説得して社に入れて、その人を自分の右腕としていく。そのためにはやはり一括採用などというものは愚の骨頂で、1人ずつ人を見て採らないと駄目だということです。こういうことは社長になってみて初めてわかるのだと、私も実感を持って言えます。

 社員みんなで団結して会社を盛り上げていくという、城山三郎の小説に出てくるような会社像は、やはり20世紀の世界です。社長になって本当にわかるのは、自分が病気になっても代わりにやってくれる人がいたらいいなということで、これはすべての社長がそう思うのではないでしょうか。そういう右腕、ナンバー2をどう見つけ育てていくか。そのためにはどうしたらいいのかを、この先述べていきたいと思います。


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