【無料お試し読み】BBTリアルタイム・オンライン・ケーススタディ Vol.28

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本書掲載のケーススタディはビジネス・ブレークスルー大学(以下BBT大学)提供のReal Time Online Case Study(略称、RTOCS)を基に収録したものです。RTOCSとは実際の企業や団体を取り上げ、「誰も正解を知らない現在進行形の経営課題」に対し、「実践」と「議論」による徹底的な論理的考察を経ることで、企業が直面している「本質的問題」を明らかにし、「経営者の視点で意思決定」を行う教育メソッドです。


『BBTリアルタイム・オンライン・ケーススタディ Vol.28』CaseStudy1より


~もしも私が永谷園ホールディングスの社長だったら~

※本解説は2016/12/25 BBT放送のRTOCS®を基に編集・収録しています。


大前の考える今回のケースにおける課題とは

 江戸時代に起源を持つ永谷園ホールディングスは、お茶づけや即席みそ汁・お吸いものなどを主力とする、和風即席食品の最大手である。創業以来、インパクトのあるテレビCMでヒット商品を多発し成長してきたが、1990年代以降は画期的な新商品がなく、成長は停滞している。独占的なシェアを持つお茶づけやお吸いものは市場が飽和しており、新たな需要の掘り起こしが課題となっている。また、市場が成長している即席みそ汁やふりかけは競合との競争が激しく、シェア拡大のための集中的な販促が課題である。


和風即席食品のトップメーカー

# 発祥は江戸時代、「お茶づけ海苔」で創業しヒット商品を多発

 お茶づけや即席みそ汁・お吸いもので有名な永谷園は、和風即席食品のトップメーカーです。他にも中華風調理食品などの商品を展開しており、売上高は2016年3月期で791億円超に上りました。

 創業は1953年ですが、その発祥は江戸時代中期にまで遡ります[図-1/永谷園ホールディングスの沿革]。

 1738年、山城国宇治田原郷湯屋谷村(現・京都府綴喜郡宇治田原町)で製茶業を営んでいた永谷宗円が煎茶の製法を発明したことが永谷園の発祥です。煎茶は最も消費されているお茶で、現在国内で生産されるお茶の6割を占めます。この永谷宗円を始祖とし、分家筋10代目にあたる永谷嘉男が1953年に設立した「永谷園本舗」が現在の永谷園です。創業の契機となった商品が、歌舞伎の定式幕になぞらえたパッケージデザインでおなじみの「お茶づけ海苔」です。

 1960年代から1980年代にかけて、相次ぐ新商品の投入とインパクトのあるテレビCMにより多くのヒット商品を生み出し、会社は大きく成長します。1964年には永谷園を代表するもう一つのロングセラー商品「松茸の味お吸いもの」、1970年代には即席みそ汁の「あさげ」、ちらし寿司の素「すし太郎」、1980年代には「麻婆春雨」などの中華風調理食品、大人にターゲットを絞った「おとなのふりかけ」など、次々とヒット商品を出し続けました。

 1990年代以降は新商品投入が減速し、新たな成長戦略を模索。2000年代には健康志向商品や高級茶づけ「極膳」シリーズを投入して高付加価値化を図ります。そして2000年代終盤以降はM&Aによる多角化を進め、ラーメンの藤原製麺やスイーツ専門店の麦の穂ホールディングス、イギリスのフリーズドライ食品会社ブルームコなどを買収しています。

 なお、2015年に持株会社制に移行して、持株会社である株式会社永谷園ホールディングスを設立、食料品の製造販売を手がける株式会社永谷園はそのグループ会社となりました。

# 和風即席食品トップ、「お茶づけ」と「即席お吸いもの」はほぼ独占

 永谷園の事業別売上高構成について詳しく見てみましょう[図-2/永谷園の事業別売上構成]。和風即席スープが26.2%、お茶づけ・ふりかけが19.7%、贈答・業務用商品が7.3%と、これら和風即席食品が売上の53.2%を占めています。次に、ちらし寿司の素やチャーハンの素など食材に混ぜ込んで使用する調理食品類が32.5%を占めます。そして、近年の多角化戦略により買収した麦の穂ホールディングスを中心とする中食・その他事業が14.3%となっています。

 主力の和風即席食品は国内トップシェアを誇ります[図-3/永谷園の主力商品の国内販売シェア~和風即席食品~]。即席みそ汁は28.6%でマルコメの26.2%と拮抗しているものの、お茶づけは77.8%、即席お吸いものは97.9%とほぼ独占状態にあります。

 その他の主力商品については、ふりかけのシェアが13.4%で丸美屋、田中食品に次ぐ3位、寿司の素のシェアが30.4%でミツカンに次ぐ2位、そしてチャーハンの素では63.6%と2位の江崎グリコに大差をつけてトップです[図-4/永谷園の主力商品の国内販売シェア~その他~]。

天井の低いマーケットで不安定な経営が続く

# ニッチ市場のトップメーカー、成長分野は限定的

 和風即席食品ほかシェアの高い商品を多く持つ永谷園ですが、調味料市場全体を見ると、永谷園の主力商品の市場規模は小さいことがわかります[図-5/永谷園の主力商品と主要調味料の国内市場規模概観]。2014年のお茶づけ・ふりかけの市場規模は656億円、和風即席スープは581億円、粉末調味料は383億円、合計で1620億円ですが、これらすべてを合計しても醤油の市場規模1565億円とほぼ同程度なのです。つまり、永谷園の主力商品の市場規模は小さいうえ、すでに高いシェアを持っているため、成長分野は限定的という状況です。さらに詳しく見てみましょう。


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