【無料お試し読み】地域、顧客、社員を巻き込む実践型人材育成(KAIKAケーススタディ)

―「JTB地球いきいきプロジェクト」―

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1|解説編|地域、顧客、社員を巻き込む実践型人材育成~JTB地球いきいきプロジェクト~


本ケースの課題

・「JTB地球いきいきプロジェクト」 ・ は人材育成の観点から社内にどのような効果をもたらしていると考えられますか。

・本プロジェクトの今後の課題をあげてみてください。どのようにすれば、さらなる発展が期待できるでしょうか。

 山梨県の竹林整備、宮城県の森の防潮堤づくり、栃木県の湿地での除草活動、カナダ・バンクーバーの自然公園での外来植物駆除・・・国内外でJTBグループ社員が地域の環境団体、参加した顧客たちと一緒に汗をかきながら、地域の生物多様性や歴史・文化を守る体験活動を続けている 。社員は、その地域ならではの素材をみつけ、パートナーを探し、地域住民と一緒に地域の魅力を感じられるプログラムを企画する。そして地域が持つ価値をあらためて見直し、どのように発展させられるかを考えて行動する。地域によっては、若手社員がプログラムの開発と交渉、準備、当日の進行まで手掛ける。こうして同社の事業ドメインである「交流文化事業」の意義を肌で感じ、考え、実務も習得する機会となっている。

1.JTBグループの概要

 明治時代、外国人誘致を目的にジャパン・ツーリスト・ビューロー(Japan Tourist Bureau)が鉄道院の協力を得て設立された。その後、同団体は幾度かの改組を経て、財団法人日本交通公社となり、その一部の営業部門が株式会社日本交通公社として分離独立した。現社名のジェイティービーは、もともとの団体Japan Tourist Bureauの頭文字からとられている。同社の2013年度の取扱額は、旅行会社として日本でトップであり、世界第7位となっている 。会社概要については図表1を参照のこと。

2.取り組みに至った背景

2.1 「観光地クリーンアップキャンペーン」からの発展

 JTBグループは、豊かな自然が育む生物の多様性や、地域に根付く歴史・伝統文化は、ツーリズム産業を支える大切な資源であり、それらの維持・保全こそが企業活動を継続していく上での責務になると考え、1985年より「観光地クリーンアップキャンペーン」を開始した。当初は、JTB旅館ホテル連盟との共催で、「地域社会とのふれあい」を目的として、全国の観光地の美化をすすめていた。2012年、創立100周年を機に「The JTB Way」を制定すると同時に、本活動を「JTB地球いきいきプロジェクト」 として発展させ、観光地の清掃活動にとどまらず、地域の観光素材に触れたり、歴史、文化の理解につながる活動も盛り込んで実施するようになった。それまで清掃活動プラスアルファの活動は一部で企画実施されていたが、名称変更を機に、各地で本格的なプログラムが立案された。

2.1 「The JTB Way」の実践

 「The JTB Way」(図表2参照)はJTBグループが、それまでの先人達の取組みの中で同社として大切にするべき価値を抽出し、再構築したものである。経営理念として「地球を舞台に人々の交流を創造して豊かな社会に貢献すること」を掲げ、これを「交流文化事業」として事業領域の設定を行い、各地での交流づくりを推進している。本事例では地域で交流を生み出し地域を活性化させることを事業の一つの柱としており、本活動を通じて社員が「The JTB Way」の実践を体現する機会となっている。このように「The JTB Way」を社内浸透させることでブランド強化を図ることが、本社ブランド戦略推進室のねらいとなっている。

3.取り組みの狙いと推進体制

3.1 気づきにつながる仕組み

 社員は、本活動の実施において、さまざまな関係者の立場を理解し、ともに発展、成長していくことを目指してプログラムを企画し、準備・実施することで社会性を高めることが期待されている。人と自然、文化、歴史とのふれあいを創出するため、行く先々に出掛けたくなる魅力を作ることが必要になる。地域ごとに企画したプログラムは、これまで旅行業で培った集客手法を使い、顧客や地元の住民などを対象に参画を促している。

 顧客は、地域の皆様や協力団体の方たちと各種の体験を行うことで、その場所を訪れるだけでは得られない愛着を持つ。地域の住民は、普段生活しているエリアに、知らなかった地域素材があったことに気づき、住んでいる地域の良さを再発見する。協力団体には、JTBグループと一緒にプログラム開発を行うことでノウハウを蓄積してもらうのと同時に、実際の来訪者(参加者)の反応を間近で感じ、今後の地域活性のヒントをつかんでもらう。

 このように、本活動はさまざまな関係者の気づきにつながる仕組みになっており、社員はそれぞれの立場を理解しながら企画・進行していくことが求められ、本活動を通じて社会性を高めていくことが期待されている。

3.2 取り組みの体制

 グループ本社の社長直轄組織であるブランド戦略推進室(2016年からは組織改編により総務部広報・ブランド戦略チームに移行)が事務局となり、各事業会社・支店がプログラムを企画・実施する。夏ごろまでに各所から次年度分のエントリーを受け付け、集約し、予算範囲内でプログラムの遂行を支援する。基本的には日帰りで昼食付き、バス1台手配となる。エントリーされた各プログラムは、「地球いきいきや地域の良さを感じさせる取り組みであるなど事業テーマに合致したものであるか否かによって選別される。旅行事業会社のみならず、他の情報サービス等の事業会社も参画が増えており、2015年からは、事業会社にも効果が感じられるように、各社で選別に関わってもらっている。

 各地域の担当者は、その地域ならではの素材をさがし、プログラムを企画、実施するとともに、プログラムの集客やPRまで担う。事務局は、活動全般のマネジメントを行い、社内外への全般的な啓発活動を行う。2012年の事業初年度は、活動の趣旨を伝える広告を打ったが、あまり熱心でない参加者が多く集まってしまう事態を避けるため、それほど大々的に宣伝活動は行ってはいない。各事業会社・支店に「どういうお客さまに来てもらいたいか」を考えてもらい、地域のショッピングセンターでチラシをまいたり、得意先に配布したりと地域限定的な取り組みを行っている。また社員にはホームページや社内報で本活動を周知し、社会的意義と成果を伝え、社員の意識向上と活動への参加を促している。

 プログラム実施当日は、企画担当以外の社員も顧客と一緒に活動に参加する。サービスを提供する側と顧客という普段の関係から、この日だけは顧客と一緒の目線になって参加し、一緒に作業をする。これにより普段とは違う顧客との絆作りにつながる。時には自社のサービスの改善点などにも気づく。プロとして経験を積めば積むほど顧客の視点に立つことが難しくなるが、社員の本プログラムへの参加により、「添乗ガイドはどのようなタイミングで伝えると伝えやすいか」など参加者目線であらためて気づきを得、成長へとつながる。

 また地域活性事業と直接かかわっていない社員も、プログラムに参加して実体験したりレクチャーを受けることで、その地域への理解が深まる。会社が進める地域活性化事業の方向性を実体験して再確認することを通じて、組織の活力増強につながると期待できる。


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