【無料お試し読み】KAIKAする経営

次世代型経営モデルのススメ

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プロローグ JMAが推進する「KAIKAプロジェクト」とは


JMAの使命とこれまで発信してきた提言

人間中心の経営・マネジメントの普及に取り組んできたJMA

 一般社団法人 日本能率協会(以下JMA)は、1942年3月30日、岸信介商工大臣の斡旋により、当時の二大能率推進団体であった日本能率連合会と日本工業協会が統合、創立されました。

 そもそも「能率」とは、米国の機械技師であり経営学者であるフレデリック・テーラーらが提唱した「科学的管理法」が、1910年代前半に日本に紹介された時に生み出された造語です。当時の有識者が科学的管理法の本質を、「人においてはその『能力』を、設備についてはその『性能』を、材料についてはその『機能性能』を、それぞれ活かしきることを追求するマネジメントである」であるとし、「能率」という言葉を生み出したのです。

 JMAの初代会長である伍堂卓雄は、科学的管理法の本質を探究する中で、「マネジメントは単なるシステムではない。重要なのは人間であり、従業員と管理者、経営者の考え方と行動である」とし、「日本的性格の能率運動」を運営方針の第一に掲げました。

時々の重要な経営課題に応じた提言活動

 以来、JMAは、人間を中心とした経営・マネジメントの普及に取り組んできました。1986年度には、ドメインを『経営革新の推進機関』とし、時代の変化を先取りした経営の在り方を追求。そして、そのための活動の一環として、JMAは1987年度から、時々の重要な経営課題に応じた提言活動を行ってきました【図‐1】。

 特に、1990年度に発表した「市民主義経営の提言唱」では、顧客や従業員、株主、社会の人々を広く「市民」と捉え、市民の支持を受けることができるかどうかを企業行動の基礎とするべきであると提言。企業の事業報告も、ほとんどが財務報告に終わっていることを改め、社会や市民にどのような役に立ったのかを詳細に説明するようにするべきだとしており、現在、広まりつつある統合レポートの考え方を、世にさきがけて発信しました。

 また、2007年度から2009年度にかけては、人と組織の潜在能力を組織的に発揮するための経営の在り方を提言。脳科学や心理学などの知見から得られた人間の本性への理解を踏まえ、「働くことの喜び」を生み出すマネジメントの重要性を提唱しました。

 この間、企業を取り巻く環境も大きく変化しました。バブルと言われた1980年代後半の景気は、不動産価格の下落とともに後退。国内市場が縮小するなか、効率化や欧米に学ぶ仕組み化などが進むようになりました。この頃にはサービス品質、時間生産性、環境経営、生活者主義などの考え方を提言として発信。中期視点を持った経営のかじ取りの在り方について、様々な調査・研究を行ってきました。

 この間には、人の処遇に関しては成果主義の導入が進み、派遣法改正等による雇用の多様化も進んできました。働く側の価値観も多様化してきます。2000年代になって見直されてきたのは理念経営やバリュー浸透でした。前述の「働くことの喜び」では、「社会の喜び」「企業の喜び」「個人の喜び」が共通の「目的軸」で一貫することで、社会に有意なものを提供するサイクルに至ることを述べています。この「目的軸」が分断されないように、理念経営に立ち戻った会社を多く研究する中で提唱された考え方でした。

人間経営を土台とした「共・進化の提唱」

 一方、80~90年代に1人あたりGDPが増加する中で、企業の果たすべき役割期待も広がってきました。「よき企業市民」であることへの意識が高まったのが1990年前後です。フィランソロピーやメセナという概念が広まってきました。

 1991年には経団連が企業行動憲章を設定。この前文には「企業を取り巻く社会環境の変化とともに、社会が企業に求める役割も変化している。今日の企業は、公正な競争を通じて適正な利益を追求するという経済的存在であることと同時に、人間が豊かに生活していくために奉仕する、広く社会全体にとって有用な存在であることが求められている」と記されています。「企業の社会的責任」は以前から使われている言葉ですが、グローバル化やIT化により複雑性が増す中で、改めて重視されるようになってきたと言えます。

 近年は、企業の生み出す「価値」へより目が向けられています。それは、経済的価値と社会的価値の両方です。環境問題や資源問題など、一社では解決できない問題に直面する中では、自社だけがよければよい、という考え方はなかなか成り立ちません。

 そこでJMAでは、2011年より、「社会との関わり」を起点にして、改めて企業や組織の活動を問い直すことに取り組み、創立70周年となった2012年度には、経営革新提言「共・進化の提唱」を発表。その中において、改めて「人間経営」を土台にして、社員と共に進化することを提言しました。

 「共・進化」とはもともと生物学の概念で、「複数の種が互いに生存や繁殖に影響を及ぼしながら進化する現象」を指します。それと同様に、企業は事業をはじめ様々な活動を通して社員、顧客、社会と共に発展していく存在であることを改めて示したのです。

 この提言が生まれた背景には、ある共通認識がありました。それは、日本の社会と企業は飛躍的に発展した一方で、本来企業が生み出すべき価値には、業績や利益以外に様々なものがあるはずが、それらが見落とされてきた面があるということです。

 また、「我が社は何のために存立しているのか」、「自分の仕事が社会とどのようにつながっているのか」を、経営者が常に社員に問いかける。この共通の目的軸のもとに、社員一人ひとりが創意工夫し、職場の仲間と協力し、目標に向かって挑戦・協働し、成長することによって「個人の働く喜び」を感じることができる。そして、企業としても、社会にとって有意義な製品やサービスの提供が実現でき、新たな価値が創出され、「企業・組織の喜び」「顧客・社会の喜び」が実現される、という経営の考え方を、広く世の中に提唱していくべきだと考えました。

 その提唱を積極的に行っていくために発足したのが、次に述べる「KAIKAプロジェクト」です。当プロジェクトは、これまでJMAが提言してきた考え方を受け継ぎつつ、現在の企業を取り巻く時代や社会の変化の中で、さらに発展させた経営思想を提言していくための活動なのです。

KAIKAプロジェクト発足の背景

 先に述べた「社会との関わり」を起点にした企業や組織の活動を問い直す取り組みの背景には、あらゆる「多様性」に企業活動が対応し続けなければならない時代となっている、という認識がありました。「急速に多様化する社会、組織、個人」、そうした環境変化を踏まえ、この新しい環境の中で企業が生み出す価値を改めて考える必要性があると考えたのです。

 この課題に対してJMAとして、より積極的に取り組むため、私たちは、

1 個の成長

2 組織の活性化

3 組織の社会性

 を同時に実現していく経営モデル(=これからの時代に求められている経営の在り方)をより多くの企業に実現してもらうことを目的としたプロジェクトを立ち上げ、プロジェクト名を「KAIKA」と名付けました。この「KAIKA」という言葉は、「開花」(花開く、成長する)、「開化」(文化が開ける、進歩する)を語源とした造語で、他律より自律、受動的ではなく能動的に「自身が持つ力を自ら拓いていく」という意味を含んでいます。

 私たちがKAIKAプロジェクトの推進によって目指している「個の成長、組織の活性化、組織の社会性」を同時に実現していく経営モデル=「KAIKA経営」の詳細や具体例については、第2章以降で改めてご説明しますが、簡単に述べるならば次のような3つのポイントに集約されます。

1 個人においては「自律的に行動し成長」していくサイクル

2 組織においては「理念や戦略が連鎖し、事業成果とともに、継続する仕組みを共有しながら活性化」が進むサイクル

3 組織が社会との接点を持ち続ける中から課題提起をし、「その財・サービスを通じて社会に存在し続けていく(組織の社会性)という認識」を高め続ける活動プロセス

 この3つのサイクルとプロセスを通じて個人、組織、社会が互いに影響し合いながら共に開花、開化していこう、共に幸福を享受できる世の中を実現しよう、という想いを抱いて「KAIKA」プロジェクトは発足し、現在まで共感の輪を広げながら活動を続けているのです。

KAIKAの基本理念

 前述のように、KAIKAは「個の成長、組織の活性化、組織の社会性」を同時に実現する経営モデル、プロセスを指します。まず個人が存在し、個人が集まって組織ができ、多くの組織が集まって社会が成り立っています。個人、組織、社会が共に進化するためには、3者いずれの観点から見ても共通する価値こそが重要であり、持続性・発展性の源なのです。

 こうした企業と社会の関係、あるいは企業の社会貢献については、最近になって意識され始めたわけではありません。90年代初めに企業メセナが盛んになり、その後にCSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)が産業界に広く浸透し、そして現在はCSV(Creating Shared Value:社会と共有できる価値を創り出すこと、共有価値の創造)が注目されています。

 企業にとって社会は、その言葉が捉える範囲が拡大していると同時に、様々なステークホルダーとの関係性そのものでもあります。個人、組織、社会の健全なダイナミズムの中で共有価値が創造できれば、「個人にプラスとなる行動が組織にとってもプラスになり、組織にプラスとなる行動が社会にとってもプラスになる」ということです。

 この場合の社会は日本国内にとどまらず、今後は日本からアジアへ、あるいは世界へと拡大されていくものです。地球環境保全、国際情勢、世界経済と様々な問題で共有価値が求められ、そこで日本企業が果たしていく役割もますます大きくなっていくのだろうと考えています。

 これまでは、「組織の視点や価値」だけで組織の活動は成り立っていましたが、今後、「個人」「組織」「社会」の3点のバランスを欠いた組織活動は、持続的な発展はできません。この3つの視点・価値を同時追求するための次世代組織のモデル=KAIKAモデルが必要なのです。

KAIKAプロジェクトの具体的活動内容

 現在私たちJMAは、先に述べたKAIKAの基本理念を踏まえて、その考え方を軸にした経営を行う企業活動を支援・推進するために、主に次のような活動を行っています。


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