【無料お試し読み】大前研一ビジネスジャーナル No.10(M&Aの成功条件/位置情報3.0時代のビジネスモデル)

good.book発行書籍の中身をお見せします。興味を持っていただけましたら書籍版もよろしくお願いします。

※書籍版は下記リンクよりご覧ください。

今回取り上げる2つのセミナーは「M&Aの成功条件」と「位置情報3.0時代のビジネスモデル」。それぞれのセミナー内容をより深く理解していただくため、セミナーに加えて「M&A」と「位置情報ビジネス」をテーマとする特別インタビュー解説を収録した。

 M&Aと位置情報ビジネスは、今のビジネスシーンにおいて何かと大きな注目を集めるキーワードであり、経営トップのみならず経営を学ぶビジネスパーソンにとって、非常に重要なテーマである。


『大前研一ビジネスジャーナル No.10(M&Aの成功条件/位置情報3.0時代のビジネスモデル) 』Chapter1より


ボーダレス・ワールドで加速する、史上最大級のM&Aブーム

●巨額ディールが世界を席巻。格下の相手にも買われる時代

 14兆円、10兆円、9兆円――。これは2015年に世界で行われたM&Aの金額です。M&Aの金額はアップダウンがあるのですが、直近のものは非常に大きいのが特徴です(図-1/2015年の主な大型M&A案件)。

 14兆円は世界最大のビール会社、ベルギーのアンハイザー・ブッシュ・インベブ(以下インベブ)がイギリスのSABミラー(以下SAB)を買収した金額。欧州の石油ガス最大手ロイヤル・ダッチ・シェルはイギリスの同業BGグループを10兆円弱で買収しました。米チャーター・コミュニケーションズは自社より規模の大きいタイム・ワーナー・ケーブルを借金込みの9兆円で買っています。

 米IT大手のデルが外部記憶装置大手のEMCグループを買収したディールも約8兆円。チーズで有名な米国のクラフト・フーズ・グループとケチャップのHJハインツが合併したときは食品業界で過去最大などと言われました。

 大きな案件がドンとあると、その年のM&Aの規模は大きくなる傾向があります。2015年は年初から10月上旬までの買収金額の合計が約408兆円でした。これは、通年で過去最高だった2007年の同期間を上回る、過去最高のペースといえます(図-1/世界のM&A金額の推移)。

●1大陸で1社しか生き残れない超氷河期がやってくる

 巨額のM&Aがこれほど増えているのはなぜか。1つは、かつて私が著書『ボーダレス・ワールド』(1990年刊)で論じた世界がリアルなものになったということがあるでしょう。

 交通や金融、通信が発達して経済に国境などなくなる。企業は国内だけでなく、世界で戦えなければ生き残れない――。これが「ボーダレス・ワールド」の考え方でした。

 今ではITがさらに発達し、IoTと呼ばれるモノのインターネットや、金融とITが融合したフィンテックというサービスも登場しました。“国境なき経済”の流れはますます進むはずです。競争は激しくなり、敗れた企業は蹴落とされ、ついにはどの業界でも1大陸1社という状況になるまで再編が進むでしょう(図-2)。

●日本企業は円グラフの「その他」でしかない

 日本の企業はとても世界での競争を勝ち抜ける状態ではありません。

 例えば、ビール業界。国内ではキリンホールディングス(以下キリン)とアサヒグループホールディングス(以下アサヒ)が激しいシェア争いを繰り広げています。サントリーホールディングス(以下サントリー)とサッポロホールディングスもいます。

 けれども、世界では存在感などまったくない。ビール販売量をベースにしたシェアを見ると、トップはインベブで20.8%。買収したSABを合わせると30.5%です。一方、キリンは2.3%、アサヒは1.2%、サントリーは0.9%。円グラフにしたら、まとめて「その他」とでもしたほうがいいような小ささです。もちろん、日本経済新聞はこんなことは書きません。お山の大将が気分を害して、広告が入ってこなくなったら困りますから。

 いずれにせよ、『ボーダレス・ワールド』を出版した時代から状況は一変し、経済はグローバル化しました。日本企業は国内の競争はもういい加減やめ、世界に目を向けなくてはいけません。

 サントリーはすでに「よし、俺はグローバルに行く」と動いています。2014年、バーボンの「ジムビーム」で有名な米国のビーム(現ビーム サントリー)を1.6兆円で買いました。

 ところが、勝負が大きすぎました。この金額、実はサントリーの2013年度の売上高とほとんど同じで、上場していないサントリーにとっては痛い出費です。買ってから「あれ、カネがない」と気付き、慌てて資金の回収に走りました。そして2015年10月、中国の青島ビールとの合弁を解消すると発表。折半出資で持っていた50%の株式を青島に約156億円で売却して、1円でも多くお金を集めようという状況に追い込まれています。


●M&Aで“おいしい”思いをするのは中小企業

 M&Aが増えているもう1つの理由は、もう自社の力だけで成長する「オーガニック・グロース」には期待できないからです。人口は減少する、市場は縮小するという状況では、他社の力を使って成長する「アーティフィシャル・グロース」も戦略の1つとして考えていかなければなりません(図-3)。

 鉄鋼や造船、石油化学のような重厚長大産業は、世界でも十分に戦える力のある分野です。それでも、同業同士が一緒になる動きが出ています。2012年に国内鉄鋼最大手の新日本製鐵が3位の住友金属工業を吸収合併して新日鐵住金になりました。三菱重工業と日立製作所(以下日立)も2014年、火力発電事業を統合して三菱日立パワーシステムズを立ち上げています。

 規模の小さなM&Aも増えています。狭い地域で「目の上のたんこぶ」「やっかいなライバル」と思っていた会社と組んでみると実はシナジーが出やすい。同業同士ではよくあることです。営業や購買のような本社スタッフも似たようなことをやっているわけですから、作業を統合して効率化しやすい。

 中小企業を専門とする仲介会社も出てきました。小さな企業ほど重要な成長ツールとしてM&Aのノウハウを磨いていかなければなりません。「M&Aは大企業の専門領域だ」と毛嫌いしていると、成長の機会が限られることになるのです。



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